東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

どんな人生を送りたいか 共に悩み実現した家族支援

 東葛病院で入退院支援課に所属している退院支援看護師です。
 脳梗塞を発症後、経口摂取が出来なくなり、ACPを含めた退院支援に介入した症例を紹介します。
 80歳代男性、妻と2人暮らし。長女は50代で逝去。嚥下評価にて経口摂取は望めず、経管栄養のため抑制。その姿を見て何が本人にとって良いか、と方針決定に思い悩む妻に寄り添いました。最終的には苦痛のないよう経鼻栄養を外し、皮下点滴での看取りを決断されました。
 一時は在宅退院も考えましたが、妻の介護負担を考慮して断念した経緯があります。自宅への外出を提案しましたが、外出前日から血圧が低く判断に迷いました。それでも妻の決意は固いものがありました。
 自宅が近づくと「お父さんの散歩コースだよ」の妻の声かけに夫は静かに頷きました。「家の匂い分かる?いつも見ていたTVよ」には口元が緩みました。毎日飲んでいた栄養ドリンクを渡すと脚を組み、飲む仕草を見せました。蓋を開けてと身振りをしたので、ティッシュを湿らせて口元を拭うと、「お父さん、おいしい?」の言葉に頷きました。
 居間には長女の写真があり、「〇〇ちゃんが待ってたって」と語りかける妻の姿がありました。病院で見ることなかったA氏本来の姿を垣間見て、心温まる時間を共有できました。
 退院支援看護師は、入院を機に意思決定を求める場面に立ち会うことも多く、支援者の私自身が判断に迷うことがあります。
 本人がどう生きてきたか、どう生きたいかを汲み、家族の揺れる思いに寄り添った外出支援でした。帰りの車内で「心残りはないです」と言った妻の様子に、改めて家族が選択で後悔しないよう、寄り添った支援を続けたい、と思いました。
(東葛病院・2025年4月号掲載)