患者・家族の想いを尊重しながら、一緒に考える看護を
患者・家族の想いを尊重しながら、一緒に考える看護を
「世界で一番怖い乗り物だ」
体重計のことをそう言っていた患者さんが、診療所通院の数年間を経て今では毎日、体重測定をして過ごされています。
心不全・COPD・糖尿病の既往のあるAさんは、8年前に心不全の悪化で3週間程度入院加療をしました。それまでは生活習慣を改善する気はあまりない、セルフケア不足の状態だったものの、退院後からは徐々に改善されていきました。外来受診の際にはなるべく毎回体重測定をし、飲酒量や食事量の変化がなかったかを看護師が話を聞いて確認しています。
今年の4月に外来受診をされた際、待合室から処置室までの歩行だけでかなりの息切れをされており、体重が6kgも増加していました。看護外来でNP(診療看護師)が本人の話を聞くと、お孫さんの結婚式で福岡に行き、食事もお酒もたくさん摂取したことがわかりました。
本来であれば入院加療も検討される状態でしたが、ご本人は昔の記憶から、入院はせず通院での加療をご希望されたため、毎週の受診と内服調整で加療開始。6週間後には元の体重に戻り、入院せずに状態も安定しました。
現在は目標体重を設定し、それよりもどれくらい増えたら危険なのかを本人と共有しつつ外来での管理を継続しています。
Aさんは高齢夫婦の二人暮らしなので、今後も厳密な管理は難しいでしょう。また、お二人の認知機能の悪化やADLの低下があれば、今は継続できていることも困難になり、結果として病状の悪化に繋がってしまうリスクもあります。
そのためなるべく病状の進行を防ぎつつ、進行したとしても本人が望む在宅生活が継続していけるように、看護師としてできることは何か。
病気のことだけではなく、患者さん本人や家族をとりまく環境や想いを尊重しながら、一緒に考えて関わっていけたらと思っています。
(生協浮間診療所・2025年1月号掲載)