本人の意思を尊重した自宅での最期と療養生活
~不安の強いご家族とともに~
本人の意思を尊重した自宅での最期と療養生活
~不安の強いご家族とともに~
Aさん100歳女性、長女、長男と3人暮らし、要介護4、訪問診療、法人内訪問看護、ケアマネジャーが介入している。30年前に右大腿骨頚部骨折で歩行困難となり、その後も肺炎や鼠径ヘルニア、サブイレウスなどで入退院歴あり。5年前、画像検査で左下葉に緩徐に増大する腫瘍あり、肺癌が疑われた。また、貧血の進行により消化管出血も否定できなかったが、いずれも高齢のため家族は精査を希望せず経過観察していた。
認知症に伴う意識障害があり、数日寝て数日起きる生活をしている。定期薬を整理し、食事や内服は可能な時に摂っていた。ポータブルトイレ移動後や睡眠周期により状態が変動するため、長男の不安が強かった。
2024年2月頃から食事と水分摂取が著しく低下したため、臨時往診。「状態は下降しゴールが近づいている。今できることを続けましょう」と主治医が伝えると「自宅に戻れなくても入院が良いのか」と長男は迷われていた。看護師は「Aさんは家で過ごしたい、と言っていた。本人の意思を尊重するのはどうか」と伝え、自宅で最期を迎える方針となった。
2月後半から皮下点滴を開始、連日関わる訪問看護師とは、家族の思いをカンファレンスで共有した。こうして自宅で療養生活を送り、3月下旬に100歳の人生に幕が閉じられた。100歳!
Aさんの状態が少しでも変わると「すぐに診てもらえないか」と訴え、不安の大きい家族だった。加えて終末期の方針が漠然としていたため、本当に自宅で最期を迎えられるか、と感じていた。
訪問看護、ケアマネジャー、訪問診療が関わり続ける中で、家族との信頼関係も少しずつ深まった。本人が望んだ自宅での療養生活を支えることができたと思う。
(うのき診療所・2024年11月号掲載)