東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

引きこもりの息子さんとの二人三脚の生活を支える

 脳梗塞で左麻痺となったAさん(78歳男性)は、退院の際に訪問リハビリの指示があり、当ステーションが介入開始となりました。
 「ゴミ屋敷で引きこもりの息子がいる」との前情報がありましたが、訪問すると1DKのアパートは物であふれ、浴室は天井までゴミ袋が詰め込まれ、台所にはたどり着けず、水が使えるのはトイレの手洗いのみ。Aさんはケアマネジャーがなんとか設置した介護ベッドに寝ていました。息子さんはゴミに埋もれるように床に寝ており、そこだけが人型に畳がすり減り、床板が見える状態でした。ガスは未払いで止まっており、電気は通っていますが、エアコンも冷蔵庫も故障中という生活状況。Aさんが働けなくなったため、生活保護申請となりました。息子さんは学生時代に人間関係からパニック障害を発症し、父一人子一人の家庭でずっとAさんが面倒を見てきたそうです。「仕事と息子の世話で生活環境までどうにもできなかった」「自分が倒れたらお終いと思っていた」と話されました。
 息子さんにも精神科の訪問診療、服薬治療が開始されました。Aさんに入る訪問介護の力で室内の片付けは進みましたが、息子さんのサポートも必要であり、地区担当の保健師にも関わってもらい障害サービスの認定を進めています。息子さんは他者からの介入に緊張が強く「いいです」「大丈夫です」が口癖ですが、Aさんを訪問する中で息子さんにも声をかけ続け、最近は「足が浮腫むのはなぜですか?」など、ご自分の体調について少しずつ話してもらえるようになりました。
 父が一緒なら近所までは出られる息子さんと、息子の支えがあれば買い物程度の歩行ができるAさん。その生活を維持するために、Aさんはリハビリにとても熱心です。
 親子の生活が少しでも快適に、安全に継続できるよう、Aさんと息子さん、それぞれを支える地域の力を結集し、見守っていきたいと思います。

(上高田訪問看護ステーション・2024年7月号掲載)