東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

家族が行った「あきらめない」介護


 101歳女性、70代次女と二人暮らし。尿路感染症を機に寝たきりになる直前まで、次女が毎日マンションフロアで手を引き歩行訓練の日課をこなし、元気に過ごされていました。
 寝たきり状態となった母への介護に不安が生じ、訪問看護を開始。オムツ交換、陰部洗浄、清拭、摘便等を指導すると、ほとんどの手技を習得し、次女は献身的に介護されていました。
 コロナ禍では細心の注意を払っていましたが、2度にわたり新型コロナに罹患されました。2度目は高熱、咳・喀痰が続き酸素や吸引も必要となる手前のギリギリの状態でした。
 ほどなくして次女も罹患し激しい咳が続く中、満身創痍での孤独な介護の日々となりました。そのような状況でも入院は望まず、自宅での看取りを望みました。その覚悟を受けて、私達は連日訪問し、親子の体調の確認、次女の介護のサポート、不安な思いを傾聴し激励を続けました。次女のモチベーションは維持され、飲食、ラゲブリオ服用も無事遂行されました。これには関係者一同驚愕し、病院であれば飲食も服薬も断念せざるをえないケースであったかもしれません。在宅で家族が行ったからこそなせる業であり、脱水症や誤嚥性肺炎等の合併症を招く事なく経過できたのではないかと思いました。
 その後も飲食は保たれ、週2回看護師と次女で両脇を抱えての居室内歩行訓練時は満面の笑みで喜ばれ、次女とヘルパー介助で週2回の自宅入浴も継続され穏やかに療養されていました。緩やかに老衰は進み104歳の誕生日目前、亡くなる前夜、うに・いくら等好物を召し上がり翌朝静かに旅立たれました。理想的な最期に次女は思い残すことはないと話されていました。咀嚼、嚥下させる事にこだわり、創意工夫を図る事がいかに大事かを次女のあきらめない介護から学ぶケースでした。

(西片あさひ訪問看護ステーション・2024年5月号掲載)