患者さんの家族とも日頃から関る大切さ
患者さんの家族とも日頃から関る大切さ
当院外来透析患者が自宅で入浴中に亡くなるということがありました。
・40歳代から2型糖尿病を発症、糖尿病性腎症にて2020年1月より血液透析導入。
・長男・嫁と同居され、家族が帰る夕方までは独居。
・透析間の体重増加が多く、臨時透析や体重コントロールのために入院を何度か行っていた。
20XX年X月、体重コントロールが困難なことが続き、臨時透析を入れることを検討。その矢先、当院の救急外来に搬送された。長男がうたた寝をしている間に、A氏が入浴し、浴室で心肺停止になり、延命処置をするも救急外来で死亡が確認された。
スタッフ数人で救急外来にいるA氏と家族へ面会。長男は「夕方、私が仕事から帰ってきて、うたた寝をしてたのがいけなかったんです…起きていたらこんなことにはならなかった…」と号泣する表情が印象的でした。
その時、私たちはどんな言葉をかけて良いか分からず、ただ悲しさを感じ、そばにいることしかできませんでした。
それからしばらくして看護師2人でA氏が長年過ごした自宅を訪問することができました。長男と嫁が出迎えてくれ、線香をあげさせてもらい、A氏の生前の話をお聞きしました。親子喧嘩を毎日していたことも明かしてくれました。嫁が「家では冷蔵庫にある1ℓの牛乳パックに口をつけて飲んだりしていて……牛乳の減り具合と冷蔵庫の汚れからすぐにお義母さんだとわかったわ」など生前の様子を話していただきました。
家族とA氏のことについて話すことで、好きなものを食べて生きたいというA氏の人生観の一部を垣間見ることができました。「Aさんは今頃天国でたくさんおいしいものを食べているかな」とその場にいる4人でA氏のことを思い、訪問を終えました。
言葉や思いを共有することで、家族と透析室のスタッフがA氏と共に過ごした時間がより貴重な思い出として振り返ることができました。実際に自宅を訪問し家族から話を聴き、A氏の人柄や生活状況や環境を理解しました。今後は患者さんと時間を共有するだけでなく、家族とも日頃から関わることが大切だと実感しました。
(代々木病院・2024年3月号掲載)