東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

看護師にとって忘れられない家族


 「おはようございます」と声を掛けると、「お・は・よ~」とかすれ声ながら、ゆっくりと口を開けあいさつを返してくれる90代女性Aさん。
 数か月前まで車椅子で過ごし、週1回訪問看護へ。デイサービスに週2回、ショートステイに月1回行き、他にも訪問入浴、訪問リハ、訪問診療とバッチリな介護を受け、介助を受けながら、三食+3時のおやつはしっかり食べていました。
 しかし、状態変化で嘔吐し、誤嚥性肺炎に。そこで60代長女夫婦と50代後半三女とで協力しながら介護することに。
 経口摂取はやめ、末梢点滴開始。訪問診療と連絡をとりながら血管確保。そんななか、「点滴は自然に最期を迎えることの妨げになるのではないか」と家族会議で話され、ひとまず点滴中の様子を見ることになりました。
 毎日訪問し、点滴終了後のロックは家族でできるように。Aさんに苦痛を与えないようにしたいとの思いが強く「褥瘡は作らない」「訪問入浴時はルートが抜けないように見守る」「血管確保ができない場合は皮下注にしますと説明されるが、そこまではしない」「浣腸も低血圧に対して行わない」など明確にしていました。
 その状態が2か月過ぎたあたりから家族に異変が。不眠や身体症状が出てきて、Aさんの状態よりもその相談や支援が主になってきました。
 3か月間毎日訪問し、点滴の終了時刻は家族の予定に合わせ工夫をし、少しでも普段の生活から変化が大きくならないようにしました。家族からは「看護師さんはわたしたち家族の一員ですね。いつもちょっとした相談をできたことが、すごく大きな力になったんです」と話されました。
 Aさんが苦痛なく自分らしく最期を迎えることができたのは、家族の力と強い気持ちがあったからこそです。私たち看護師にとって忘れられない家族でした。
(健生会きょうりつ訪問看護ステーション・2023年10月号掲載)