東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

笑顔の時間が増えるように


 私は病棟と外来で勤務してきました。往診での初めての体験をお話しします。ご高齢の患者が多い往診ですが、皆さん月2回の往診で医師に会えることを待ちわびており、顔を見ただけで元気になったと話されると嬉しいものでした。
 ある90歳の男性は胃がん手術後、食欲不振で往診開始となりました。妻、次男との3人暮らしで往診時はいつも娘さんが立ち会っていました。初日は入り口で元気に「先生、わざわざありがとうございます」と頭を下げて笑顔でした。食事はほとんど食べられず、水分はお酒のみ。家族の話は受け入れず薬も内服していない状態でした。
 娘さんは、「往診が急に入ったことで今までの生活が壊れてしまうのではないか」と不安な気持ちを話されました。私は言葉かけはしていたものの適切なアドバイスができないもどかしさを感じていました。その後、体力が低下し臥床の時間が長くなり、今後のことについて家族で話し合っていただきました。
 長男、次男はこのまま自宅で看取りたい意向でしたが、ご本人の「入院してみようか」の言葉で入院することになりました。しかし退院間近でお亡くなりになりました。私は「患者様、家族に後悔はなかっただろうか?」「どのような気持ちだろうか?」と考えていましたが、娘さんからは明るい声で「亡くなる前に家族みんなで看取ることができました。本当に良かったです。ありがとうございました」との言葉をいただきました。本当に良かったと涙がでる思いでした。
 往診は時間が限られています。短い時間の中で患者様と家族ができるだけ安心して生活でき、病気に対する不安が軽減され、笑顔でいる時間が増えるよう努力していきたいと思います。
(クリニック柳島・2023年4月号掲載)