多職種で連携した退院支援を
多職種で連携した退院支援を
定期通院・健診受診歴のない独居生活のA氏(70代男性)は、自宅で倒れているところをマンションの管理人に発見されて当院に救急搬送後、脱水症の診断で入院となりました。
入院1週間前に倒れてから自宅で這って移動していたようで、十分に食事もとれずに体動困難となった様子。結婚歴はなく家族は義妹のみ。入院中の検査結果で糖尿病の診断あり。脱水症は改善したものの、体力・ADL低下が著しくベッド上での生活でした。起立性低血圧もあり、リハビリはなかなか進まない状況でした。
A氏の希望は「自宅でゆっくり過ごしたい。歩けるようになりたい」。この思いを実現するため、まずは介護保険の申請からスタートしました。そしてA氏の生活状況を知るため、担当PTとケアマネ、福祉用具担当者、退院支援看護師とA氏で自宅訪問を実施しました。
家の中はペットボトルや新聞などが散乱し、トイレの便座は割れて、玄関の鍵は壊れている状況でした。すぐに清掃業者に依頼をして義妹の協力のもと自宅清掃を実施。以前は荷物の山の中で寝ていたため、介護ベッドをレンタルすることになりました。
退院前カンファレンスでは、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリ、訪問介護、訪問入浴、福祉用具、配食サービスなどの支援体制を整えました。A氏は退院の頃にはポータブルトイレ自立までADLが回復しました。
1年たった現在は、歩行器歩行が安定し、デイサービスを利用しています。介護保険のサービスを利用しながらA氏が望んだ「自宅でゆっくり過ごしたい」に近づけているようです。
本人の意向を確認しながら、どうすればそれが実現できるのか。どのようなサービスを利用すれば安心した生活を送れるのか。患者様それぞれの思いや身体状態にあった支援ができるように、これからも多職種で連携した退院支援を実践していきたい。
(中野共立病院・2023年3月号掲載)