東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

身近で相談しやすい看護師に

 60代女性のA氏は娘さんと2人暮らし。喉のつかえを自覚してから3か月で症状悪化し、5か月で食事が喉を通らなくなりました。
 頭部にできものができて皮膚科受診し、生検をすると悪性。精密検査で食道がん末期と診断されましたが、化学療法や放射線療法をせずに自宅で過ごしたいと退院されました。口からの摂取は困難で家でも点滴をするため訪問看護の開始となりました。
 A氏は我慢強く弱音は吐かない人でした。一方、娘さんは素直で不器用でしたが、助けてあげたくなるような人です。母娘なのに性格は反対だったので、お互いを気遣い、本音で話せていないようでした。
 頭部の腫瘤は徐々に大きくなっていき、出血もするようになりました。頭部からの出血が続き、不安な娘さんから連絡を受け、看護師が駆けつけることが何度かありました。今まで気丈にふるまっていたA氏もいら立ちを見せ、本人の苦痛も強いのだと感じられました。娘さんの不安もピークに達していたため今後どのように過ごしていきたいか、それぞれ確認しました。
 娘さんは「母がそんな風に思っていたなんて知らなかった。あまり“頑張って”というのはやめようと思います。ありがとうございました」と言ってくれました。お互いを想いあっているのに歯がゆさも感じました。その日は、ゆっくり2人で話してから入院するかどうか決めるように伝えました。次の日に入院を決め、5日後に永眠されました。
 人生の最終段階における医療・ケアのプロセス決定に関するガイドラインによると「本人の意思は時間の経過と共に変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意見を、その都度示し伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返しおこなわれることが重要である」と述べています。
 私は利用者さんにとって一番身近で「相談しやすい看護師さん」でいたいと思っています。時間の経過の中で本人の希望や考えは変わっていくのは当然です。その希望に耳を傾け見逃さないようこれからも関わっていきたいと思います。
(訪問看護ステーションほくと サテライトたんぽぽ・2022年1月号掲載)