生活の安定めざして見守ること
生活の安定めざして見守ること
Aさん64歳、30歳から統合失調症で精神科通院。糖尿病もあり。他に皮膚科、内科、通所リハビリ、精神科デイケア、病棟など職種を超えて親しまれている方です。ご両親も訪問看護を利用されており、ご両親が他界後独居生活になり、身体的不安から血糖値が不安定となり緊急入院が増え、2015年から訪問看護を開始しました。
当初はデイケアと連携を図り、自立を促すようサポートしていました。しかし、原因不明の頭痛が増え、頭痛薬の過剰摂取で吐き気の訴えを繰り返すようになりました。
院内・自宅を問わず大声で「頭が痛い、もうどうしていいか分からない」と興奮が止まらず、入院することもありました。気持ちが落ち着くと「家に居たい、居られるよね」と話します。大好きだったデイケアも休むようになり、家に居る日は、不安で各方面に電話します。
家に居ると体力が低下し、デイケアに歩いていくことが難しくなっていきました。始めは嫌がりましたが、本人とも相談し送迎付の通所リハビリ、ショートステイに少しずつ移行していきました。
ショートステイ後は「人がいると安心するね」「痛かったけれど、薬は飲まなかった」と話されます。家に居ると頭痛の訴えや質問など何度も電話がありますが、以前のような興奮する様子はほとんどなく、Aさんの意思で施設を申し込み、入所されました。最後の訪問時「仕方ないと思っている、後悔はない」と全く動揺された様子はありませんでした。
Aさんにとってご両親が他界された後の独居生活は、手探りで不安な日びでした。そのようななか、地域にある代々木病院の存在は支えだったと思います。訪問看護で、家での話や行動から心の動きを感じながらサポートしてきました。
今の生活に「慣れた」と話すAさん。自分自身の生活を踏まえ納得し、入所という自己決定をされたことは、本当に良かったと思います。
(代々木病院・2021年7月号掲載)