東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

ナイチンゲールの「看護覚え書」

 フローレンス・ナイチンゲールの「看護覚え書」は看護師だけではなく多くの人がご存じのことと思います。
 今年の1月、我が国も新型コロナ感染症が確認され、瞬く間に広がり始めました。外来に来られる患者様の感染リスクを減らすには何をすべきか、空気清浄機の効果はどうか。まずは窓を開けるしかないと、真冬でしたが1時間ごとの換気をしました。政府から「3密を避けて」といわれる前です。
 そんな時期に、学生時代に読んだ「看護覚え書」を思い出しました。1859年に発表された著書の第一章に換気の事が書かれているのです。AIや5Gの時代になっても、160年前の教えを守ることが大切だと、改めて看護という仕事を考えさせられました。
 今回関わらせて頂いたAさんは大腸癌、肝臓癌、胃癌の既往があり、サブイレウスで入院し退院後も衰弱が著しく、脱水になっていました。今後のことを考えると、奥様には現状を説明し今後起こり得ることを話し、いざという時に慌てないよう準備が必要と考えました。その時点で、Aさんが再び食事が摂れるようになるとは想像できませんでした。
 訪問診療と訪問看護で毎日点滴を行い、情報共有を目的にカンファレンスを開きました。私は残された日びを点滴で穏やかに過ごして頂きたいと思っていましたが、訪問看護師さんは食べて頂くことを諦めていませんでした。奥様からは「死ぬ話ばかりだったけど、生きる話でよかったわね、パパ」という言葉が出たそうです。Aさんはお蕎麦や果物を食べることができて大変喜んでおられました。食べることが大きな喜びを与えたのです。
 私は学生時代トラベルビーの「人間対人間の看護」を読み、看護の介入の計画は観察とコミュニケーションから患者のニードを確かめるのが、最初に必要なことだということを学び実践してきたつもりでした。その後Aさんがお亡くなりになり、写真に手を合わせ、もう一度初心にかえって患者さんのために働こうと思いました。
 (上目黒診療所・2020年11月号掲載)