東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

血糖値と精神安定維持の難しさ

 1年前に精神科の医師から勧められて、訪問看護を開始した30代独居の男性Aさんがいます。
 「うつ病」「てんかん発作」があるため外出は最低限度で、病院への受診時と週1回のスーパーへの買い物の時だけとなっています。友だちはいますが、電話やメールで会話する程度。
 親や兄弟とは20年間連絡をとっていないそうです。アパートの部屋の中で、テレビとスマホを見ています。そして1匹のオス猫を飼って話し相手にしています。「糖尿病」もあり、インスリン自己注射をしています。
 Aさんは年齢も若いので、何か外とのつながりをもつこと、例えばデイケアや作業所へ通うことなどを勧めてみました。しかし、この働きかけが本人を追い詰め、ストレスがたまり甘い飲み物を一気に2L飲んだり、クリスマスケーキ1ホール食べたりと糖尿病の悪化につながってしまいました。
 血糖値が急激に上がり、内科の主治医から入院を勧められました。しかし、精神科の受診があること、猫を友だちに預けないと入院できないとの理由で、2ヵ月先延ばしになりました。
 入院すると血糖値が安定し、リハビリも行い、てんかん発作もなく、順調な経過で退院してきました。入院中の様子を聞くと「入院生活はイヤだった。あまり入院したくない」というため、できるだけ入院しないように血糖値を維持することを考えました。
 前回のように本人へのストレスにならないために、Aさんの意向を聞きながら何ができるか考え、週2回くらいスーパーに買い物へ出かける、毎週訪問時に体重測定をすることを提案し、本人も了解してくれました。
 Aさんは、午前中寝ていることが多く、食事は朝昼兼用、または夕食1回で、1日3回行うインスリンも、食事が1~2回のためそれに合わせて減らしていました。そのような生活のため2ヶ月で血糖値がまた悪化し、再入院となってしまいました。
 血糖値の安定と精神の安定、どのように維持したらいいのか難しい課題です。
(かるがも訪問看護ステーション・2020年10月号掲載)