東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

治療と生活支援との連携を

 Aさん76歳女性、脳梗塞で右不全麻痺があり姪のBさんとの2人暮らしです。Bさん付添いの通院から2017年往診になりました。
 当初、訪問時はリビングの椅子に座って往診を待っていました。床は食べかすや薬のヒートなど歩くと靴下にザラザラと色いろなものがくっついてきます。どんどん汚れてはいかないので一応掃除はしているようです。長く伸びた髪はぼさぼさで洋服はいつも同じもの、股間は大きく膨れておむつがパンパンだと想像がつきます。
 テーブルの上にはマグカップがいくつかおいてあり、空の物は汚れがこびりついています。「Bが用意してくれたのよ」と笑顔で話します。
 社会との接点はなく、介護保険も利用なし、包括からの声掛けも邪険に断ります。月日が流れるうちにADLは落ちていき、すでにリビングには移動できず、ベッドに腰掛け、1日を過ごします。支えがなければ立位は取れないので、おむつは上げられません。糞尿はベッドに敷いてある布団と床に流れます。
 入院や介護保険サービスをすすめてもBさんともども受入れず。冬になりファンヒーターの利用で下肢に火傷を負い処置どころか保清もできず、Aさんもあきらめて訪問看護が入りましたが、治癒せず、入院を承諾してもらうことになりました。
 弟に連絡し、担当医師、事務長、訪問看護師とともにシーツで包み抱え上げて病院の車に乗せ、入院しました。
 久びさに訪問した弟は、病院までの道のりで何度も溜息をつきながら「なんであんな状況にいたんだ」といっていたことが印象的です。弟が来ることで「お父さんに怒られるからきれいにしなくちゃ」と話したBさん。「みっともない姿は見せたくない」と入院を拒んだAさん。
 「普通あんな状況でいられないよね」と思いますが、「普通」って何でしょう?病院と違い訪問診療は生活の一部しか関われず、治療はできても生活の支援はできません。そのために、介護サービスや訪問看護などとの連携が大切になってきます。私たちは何ができるのか、考えさせられた事例でした。

 (下赤塚診療所・2020年9月号掲載)