東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

健康問題抱える患者さんへの退院支援

 私が働く回復期病棟には健康問題を抱えた若い患者も多く入院します。若い患者は復職や金銭面の問題などに直面しており、退院支援の際に悩むケースがあります。患者との関わりを通じて学んだことを、SDH(健康の社会的決定要因)の視点で振り返る機会がありました。
 50代女性の患者Aさんは、心不全・腎不全にて緊急入院した後に神経損傷・廃用症候群を合併し歩行困難となり、リハビリ目的で当院に入院となりました。30代から糖尿病・高血圧を指摘されていましたが長年放置しており、その結果、腎不全・心不全となってしまいました。通院歴はなく病識も乏しい状況でした。
 退院後は一人暮らしの生活に戻るため、復職や生活習慣の改善、内科的治療の継続など、様ざまな課題がありました。経済面の心配からとにかく早く復職しないと困るという思いが強く、後遺症が残るなどの身体の状態や病状についての受け入れが全くできていませんでした。
 Aさんの不安な思いを傾聴するとともに栄養指導や心不全・腎不全・糖尿病についての説明と生活管理についての指導を行い、セラピストやMSWと相談をしながら退院支援を行いました。その中で病状や後遺症についての受け入れも少しずつできるように変容していきました。
 このようなコンプライアンス不良な患者に出会った時、「好き勝手に生活してきたのだから自己責任だ、もともとの性格がだらしないから仕方ない」などと決めつけてしまいがちです。
 しかし、SDHの視点で捉えてみると、多忙で残業が多く自炊をする時間がとれなかったり、側に心配してくれる家族がいなかったり、お金が心配で受診をしていなかったなど、患者自身の考え方や行動がどのような社会的背景から起因しているものなのかが見えてきます。
 今回の事例を通して、患者を捉える際に行為や結果だけをみるだけではなく、そもそもどうしてこの様な病状・状況に至ったのか、どのような生活史や人生史が背景にあるのかを把握することで、より深いアセスメントができ、より生活に密着した個別性の深い支援ができるのではないかと感じました。

 (柳原リハビリテーション病院・2020年8月号掲載)