時にはお節介な場面も必要
時にはお節介な場面も必要
いつも受診時には一番乗りで、元気にやってくる80代のAさん。その日は来院せず、予約未来院者として電話をかけると、数日前に転倒して、その後から這って家の中を歩いているとのこと。薬はきちんと内服できているようでしたが、なにか変な様子。
スタッフから報告を受け、「いっそのこと行ってみよう」と、送迎車両の空きを確認し、スタッフと2人、本人のお宅へ向かいました。部屋の中は割ときれいにしており、話を聞くと、買い物は知り合いがしてくれるけれど、昨日から食事はあまり食べられていない。布団の出し入れはできず、適当に寝ている状態で、薬もこの数日は飲めていないのではないかと思われる感じでした。
お話の内容は、言っていることはわかりますが、同じ内容を繰り返しているので、本人を連れて受診をさせた方がいいと判断し、受診を促しますが「今日は行く気にならない。今日は行かない」の一点張り。こちらの指示も入りません。半ば強引に連れだした形にはなりましたが、なんとか車に乗せることができました。
「今日は行かないと言われたときに、わたしたちとしては『はいそうですか、さようなら』ということにはならないですよ」とこちらの気持ちを伝えると、「そうですよね」と返事がありました。
診療所の診療時間が終了しているため、病院の救急外来に診察を依頼してみてもらうことができましたが、明らかな所見はなく、「入院することは聞いていない」となんとその日は帰宅してしまいました。
翌日、診療所を受診する約束をしていましたが、やはり受診できず、介護保険の申請もされていなかったため、地域包括、ケースワーカーに介入してもらい、臨時往診をし入院の段取りをしてもらいました。一旦入院し、通院でいいのか、在宅に切り替えなのか、今後決めていく予定です。
電話では相手が見えない分、「なんかおかしい」「なんとなく変だな」と気づくアンテナが必要ですし、時にはお節介な場面も必要だと思っています。
(中野共立診療所・2020年7月号掲載)