東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

生き様に係わる在宅の奥深さ

 99歳のAさんは、加齢や脳梗塞後遺症による通院困難で他院往診中でしたが、小さなところでの往診のほうが相談もしやすいとのことで、当院での往診となりました。Aさんは短的な会話は可能で、娘さんと2人暮らし。事前情報で娘さんは心配症で細かく、話がまとまらないとのことでしたが、Aさんの症状が安定していたせいか、トラブルはありませんでした。
 2ケ月たったころに、嘔吐にて誤嚥性肺炎をおこし入院。退院の調整会議で娘さんは、新型肺炎流行の影響で面会できなかったため、寿命が短くなってもいいから早く家に帰したいと退院を希望。しかし、予後について1~2年の想定でしたが、看取りでの自宅退院を受け入れておらず、医師の話もあまり覚えていない様子でした。退院時は食事を摂れず500mlの皮下点滴で、血圧触診で抹消チアノーゼもあり、呼吸は呻吟様呼吸でした。
 娘さんは病院に戻ろうか迷っていましたが、主治医の「どこに行っても状態は変わらない。末期的な状態で死去が近く、このまま家で看ていくのがよい」との説明に納得。酸素導入し、呼吸が止まっても救急車を呼ばず訪問看護師に連絡することと、夜間でも当直医師が必ず自宅に行くので心配しないよう説明しました。
 2日後の往診では傾眠傾向で、痰がらみや苦痛表情もなくむしろ穏やか。酸素もきちんと行き渡っているので苦しくはないことを説明すると、娘さんはほっとした表情をみせました。何かあればすぐに訪問看護師に連絡することを再度説明。帰り際「今日も往診にきてもらえて良かった」との言葉がありました。
 翌日、訪問看護師より呼吸停止の連絡を受け、当直医が死亡確認しました。当初の娘さんの様子では「在宅看取りは難しいかも」という印象でしたが、気持ちに寄り沿い、心配なことに丁寧に向き合い説明し、迷っている時に背中を押してあげることで落ち着き、在宅看取りに繋がったと思います。支えてくれた訪問看護師とも密に連絡をとりあい、娘さんの看取りへの受け止め方も細かく把握できたと思います。
 在宅にたずさわり6年、患者や家族の生き様により深く関わる在宅の奥深さに、すっかり魅了されています。(かもん宿診療所・2020年4月号掲載)