東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

理解し易い言葉で選択肢を提供

 王子生協病院回復期リハビリテーション病棟は、機能回復を行い住み慣れた地域に帰ることを目標とした42床の病棟です。看護師・介護福祉士は担当制で、患者さん1人1人に寄り添った看護を行っています。
 脳出血で入院した70代のAさんは、妻・娘・息子とは別居して一人で生活をしてきました。娘さんが、面談に参加をしていますが、面会も少なく荷物を置いていくだけでした。
 Aさんは、嚥下障害があり、経鼻経管栄養を行いたびたび吸痰が必要であったり、管をいじり抜けてしまうこともあり、抑制をしなければなりませんでした。言語聴覚士による嚥下訓練も行っていましたが、意識障害もあり訓練が進まず、機能向上は望めないと判断されました。
 面談を重ね、ご家族の“引き取るつもりはない”という発言もあり、本人の状況を鑑みて療養型病院に転院することになりました。
 私はA氏のプライマリーとしては、経鼻経管栄養を継続するか手術で胃瘻にするのか、なにもしないのかという選択肢を提供し、ご家族と一緒に考えることに最も悩みました。
 A氏は高次脳機能障害・意識障害があり、意思表示・自己判断は困難でした。この場合、判断を行うのはご家族です。
 私たちが、今までの生活背景を知る努力をしても患者さんのすべてを知ることは出来ません。私たちが自信をもって言えるのは今現在の患者さんの状況だけなのです。そんな中でも、いかにご家族に寄り添い、患者さんだったらどう考えるだろうかと考え、ご家族が受け入れられる情報提供を行い一緒に考えることが必要だと思いました。
 医療者の視点にかたよった情報提供を行わず、理解し易い言葉で選択肢を提供することも難しかったですが、選択肢に正解はなく倫理的に悩んだケースでした。
 今後も、これまでの患者さんを知る努力は怠らず全人的に捉えていくこと、ご家族にも寄り添いながら支えられるような知識提供を行える看護師を目指し、日々実践を重ねていこうと思います。
(王子生協病院・2019年1月号掲載)