孤独にさせない診療所をめざす
孤独にさせない診療所をめざす
和田堀診療所は1階が外来、2階ヘルパーステーション、3階に組合員ルームがある小さな敷地に建つ診療所です。周りにはクリニックや病院が多く、競争の激しい地域です。
組合員さんには、毎月の機関紙発行や健診お誘い電話かけなどで色いろと助けて頂いていますが、今回は各部署が協力できた事例を紹介します。
A氏68歳独居、定年後無職、友人との金銭トラブルでうつ状態、やる気もなくなり筋力低下で動くのも困難になりました。家賃や公共料金の滞納で部屋に書類が散乱し、やっと自分で区議の生活相談に電話して、そこから当組合員に訪問依頼がきました。伺ったところ、身体はやせ細り部屋は汚れ、驚いて当院事務長に連絡がきました。
さっそく次の日送迎して健診を行い、居宅の担当の方に介護申請を依頼したら、その日のうちに訪問してくれました。散乱していた書類や請求書を整理して、支払いの手伝いやヘルパーの手配をしてくれました。
高血圧があり、送迎で受診して治療が始まりましたが1か月程経った頃、体幹部に湿疹ができて広がり、当院皮膚科で伝染性膿痂疹と診断されました。洗浄、軟膏塗布、湿潤療法の処置をしていましたが、範囲が広いので当院の風呂場でシャワーを使うようにしたところ、自分で洗髪、全身を洗えるようになりました。ヘルパーさんも買物、掃除で入り、だんだん元気になり、きれいになり、洋服も着替えられるようになって以前の自分に戻っていったようでした。皮膚の状態も順調に回復、送迎は週5回から4回、3回、2回と減っていき、連携がうまくいきました…と書く予定でした。しかし、3か月がたった送迎の日、自宅で亡くなっているのが確認されました。死因は心不全でした。私たちは突然のことに非常に驚き、嘆き悲しみました。しかし、早く発見されたのは、不幸中の幸いだったかもしれません。
今回のことで、定年後どこにも関わりを持たない独居の方が、今後どれだけ多くなっていくのか、改めて不安を感じました。そのような方がたに安心して利用してもらえる診療所を目指さなければ…という思いを強く持った事例でした。
(和田堀診療所・2018年3月号掲載)