自分たちなりの寄り添いかたで
自分たちなりの寄り添いかたで
立川相互病院は専門医療・救急医療・地域医療・在宅療養を支える291床の急性期病院です。2016年12月に移転し開院をしました。私の病棟は外科病棟です。移転後は、外科ということもあり、入退院数平均120件、在院日数平均10日、病棟稼働95%前後と、めまぐるしい日々を送っています。
50代の女性A氏は、当院を受診した時点で、すでに、手術適応のない右乳癌と診断をされた方です。この間、照射やホルモン療法で治療をしてきました。先日、呼吸苦で入院し、酸素を導入し自宅退院をしましたが、不安と、痛みと、息苦しさですぐに再入院となりました。入院後、麻薬を開始し苦痛緩和をはかり、今後自宅か?緩和病棟か?ホスピスか?とご家族と本人と話をすすめました。A氏とご家族から、「ここの病院が好き、お医者さんも、看護師さんも安心できる。ここにいさせてくれないか」と希望がありました。
日頃から、看護スタッフに「病院には機能の違いがあり、急性期病院の役割をしっかりはたしていこう」と伝えていましたので、看護スタッフから「A氏だけ、ずっとここにいることは、おかしい」と疑問の声があがりました。これまで、最後まで看てもらいたいと希望する患者はたくさんおり、「転院をしてもらった患者に申し訳ない」と意見が出されました。
医師、看護師、MSW、退院調整看護師とカンファレンスを繰り返し行いました。たしかに、急性期としての治療は終了しており、本来なら退院、転院をしてもらう必要があります。しかし、50代という若さや、予後が短いこと、ご家族の支えが重要で家から近いこと、何より病棟スタッフとの関係性が良好で安心できることなど「個別性を大切に対応していきたい」と意見が出されました。
看護管理にも相談し、「患者の想いによりそうのが民医連でしょ」とエールをもらい、A氏を自分達の病棟でみていこうと決めました。
日勤の看護師だけでなく、夜勤の看護師も不安で眠れないA氏のベットサイドで話を30分以上傾聴したり、私は病室訪問をして、商社でキャリアウーマンだったA氏に仕事の悩みを相談する仲になりました。
A氏は、私にも、スタッフにも、なんでこんなに生きることに執着しちゃうんだろうと言います。正直、かえす言葉はみつかりません。緩和のプロ?のようにはいかない私たちですが、自分たちなりの寄り添いかたでA氏との時間を過ごしていきたいと思います。
(立川相互病院・2017年11月号掲載)