東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

頼りにされる在宅診療所めざす

 病院での治療を終えて余命を自宅で送るという選択をされた患者とご家族を支えるのは、24時間在宅支援診療所の役割です。
 Aさんは56歳の女性で一家の主でした。胃がんの終末期で痛みのコントロールをしながらQOLを重視した生活を送るために自宅に戻られました。退院直後はAさんのお母様と2人の娘さんに囲まれて穏やかに、時には外出などもされて過ごしておられました。
 しかし、往診開始からしばらくすると痛みや嘔気などの症状が出てこられ、床上での生活になってしまいました。娘さんは痛みや嘔気などの症状や経口摂取出来た飲水量や食事量、排泄回数、睡眠の状態等を細かくノートに書き留めて報告して下さいました。
 娘さんは仕事を退職し、自宅でAさんの世話をしていました。Aさんの顔色や表情を見ながら要求を理解し、水分を与えたり身体の位置を変えたりしていました。心の通じ合った親子の介護を見ていると、Aさんの痛みや苦しみを出来る限りコントロール出来れば、穏やかに過ごして頂けるだろうと私は思っていました。
 しかし、ある時Aさんは往診料金を心配されているご様子でした。症状の悪化で往診回数も増えていました。その場におられた娘さんはAさんを気づかい、優しく声をかけていました。
 私はがん末期の患者が安心して過ごして頂くための気づかいに欠け、充分な情報を提供出来ていなかったことを反省しました。残された貴重な時間を安心して過ごすには環境を整えることもとても重要です。
 患者様とご家族の真のニーズを理解し、医療保険制度や介護保険制度、自治体の制度など、情報を提供し一緒に考えることの大切さを再認識しました。
 また、症状や内服薬について医師の説明が理解出来たか確認していくことも大切です。まだ信頼関係の構築も出来る前、退院から2か月後にAさんは旅立ってしまいました。私は看護者として原点に返り、頼りにされる在宅支援診療所を目指そうと思いました。
(上目黒診療所・2017年8月号掲載)