東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

患者と家族を支える地域医療

 病棟経験しかなかった私が訪問看護の世界に入り、新しい看護の在り方に感銘を受けた事例を紹介します。
 89歳、女性、胆管癌末期。胸椎圧迫骨折にて入院中に胆管癌が発見されPTCD挿入しましたが、入院中のスタッフの対応に不信感があり、ご本人のご希望で在宅療養となりました。
 同居していた三女が介護を行っていましたが、PTCDという特殊な管が挿入されていたため、退院当初は三女の不安が強く、PTCDがつまり流出不良となる事も多々あり、一時はこのまま家で看るのは厳しいのではないかと悩まれていました。
 そこで、私たちは往診医と密に連絡を取り、ご本人だけでなく介護者の状況も報告することにより、医師も不安の傾聴をし、今後についての丁寧な説明を行うなど、その都度対応してもらうことができました。
 また、ケアマネージャーも訪問回数を増やし、サポートしながら速やかに看護師に情報を流してくれていて、相談しながらよりよいケアについて考えることができました。しだいに三女の不安も軽減されて、「自宅で看取れるかもしれない」との言動もきかれるようになったのです。
 状態的には、疼痛が出現することなく意識レベルが低下し、最期は呼吸が停止するまでしっかりと見守りながら看取ることができました。三女は看取った後、「苦しまずに自宅で逝くことができ、母は理想的な亡くなり方をしたと思う」と話されていました。
 経験上、自宅で最期を看取るという状況が想像できなかった私にとって、地域で連携して全力でサポートしていけば、患者様、ご家族の望むような最期が自宅で迎えられるということを実感できた事例でした。
 「最後は自分の家で死にたい」と思っている人は少なからずいるでしょう。医療行為がともなったり、苦痛が現れたりと、在宅管理が困難な事例もあるとは思いますが、できる限り希望に添えるように地域で連携し、サポートしていくことが大切だと感じました。
(けいひん訪問看護ステーション・2017年7月号掲載)