東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

生活史を大切にしたケア提供

 緩和ケア病棟は今年9年目を迎えます。がん患者に対してがんによる苦痛を緩和し在宅生活に戻ることを目標に日々ケアを行っています。がんと言っても生活背景によって様々な症状が出ます。そのため病名に添ったケアは通用しません。その人と家族の生活史を聴き、その人オリジナルのケアをすることが緩和ケアにとって大切なことだと思っています。
 本人の生活史を聴き、在宅調整をした事例を一つ紹介します。子宮がん、肺転移の女性。結婚してすぐ病気になってしまった事、闘病の事、家で過ごしたい事などたくさんお話をしてくれました。その言葉一つ一つに生きる意欲が伝わってくるほどでした。夫は「妻マニアです」と常に本人の気持ちに寄り添っていました。
 病状は急激に進行、本人の思いを叶える事が優先と判断、急遽往診と訪問看護を導入し自宅に帰りました。それから数日後、「自宅で看取りました」と連絡が入りました。夫の腕の中で息を引き取ったそうです。夫から「あの状態で家に帰れるとは思いませんでした。ありがとうございました」と言葉をいただき、ほっと安堵の情が込み上げてきました。
 このようなケアは病棟医師、看護師だけではできません。家族はもちろん在宅スタッフ、院内医療スタッフなどたくさんの協力があってこそ実現できることです。生活史を聴けば聴くほど終末期と介護という厳しい現実が壁となって、悩み苦しむことがありますが、私たちの周りには力をかしてくれる他職種のスタッフがいます。とても嬉しく感謝しています。
 皆さんの力をかりてこれからも患者と家族の生活史を大切にしたオリジナルのケアを提供し続けたいと思います。
(みさと健和病院・2017年4月号掲載)