東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

患者さんの今を大切にする看護

 私が働く緩和ケア病棟は、がんのターミナル期の患者のがんに伴う苦痛、不快な症状をできる限り取り除きながらも不必要な医療処置は行いません。穏やかに大切な残りの時間を過ごすことができるようなケアをめざして日々頑張っています。
 そんな中、Aさん(40代男性)が緩和ケア病棟に来られました。お母さんの介護を続け、今年1月に看取ったばかりのAさんに今度は自らががんでターミナル期という事実は酷なものでした。肝臓に転移したがんの影響から腹水貯留しており、離れて住む九州のお姉さんが面会に来たころには、るい痩著しく、余命も日数単位という状況でした。お姉さんはやせ細る弟さんを見て、予定通り帰るか、少し滞在を伸ばすか迷っていました。
 独身のAさんにとってお姉さんの存在はどんなに心強く嬉しいことであろうか、何とかお姉さんとAさんの時間を大事にできないかと看護師間で考えました。4月が誕生日のAさんは入院した時期でもあり誕生日も祝えなかっただろうということで急遽お誕生会をすることにしました。正直、お誕生会などしてしまって大丈夫だろうかという気持ちもありましたが、お姉さんも賛同してくださり、栄養課からフルーツの盛り合わせが届き、お誕生会を決行しました。
 もともと物静かな性格のAさんでしたが、今までにない満面の笑顔で、フルーツとコーヒーを飲み、お姉さんと昔の想い出話に花が咲きました。懐かしさと嬉しさの笑顔でした。その表情を見て、お姉さんとの時間を何とか作ろう、喫茶店にも行けないなら、ここで何かしよう、と看護師間で話し合い、実行できたことが奇跡に思えました。
 Aさんはそのお誕生会から数日後に旅立たれました。
 一日一日、患者さんの今を大切にできる看護をしたい、Aさんのお誕生会を通して教えていただいたと思っています。人生の最期に向き合う一方で「生きている」ことを最大限肯定し応援できる看護をしていきたいと思います。
(東葛病院・2016年8月号掲載)