東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

「在宅で」の患者の思いを全力で実現

 小豆沢病院の地域包括ケア病床は2014年5月に24床からスタートし8月からは45床の地域包括ケア病棟になりました。入院される患者さんは急性期病院での治療後にリハビリテーションの継続や在宅調整を目的に転院される方が大半を占めていますが、看取り目的で入院される方もいます。
 今回、肺がんの末期と診断されたA氏との関わりについて振り返りたいと思います。
 A氏は40代男性。独居で親とは疎遠状態。仕事はしておらず生活保護を受給。大学病院で放射線治療などをしましたが、全身状態が悪化し積極的な治療はできないと判断、また独居で通院が困難などの社会的な事情もあり緩和ケア病棟入院までの待機目的も兼ねて当院に転院となりました。
 転院当初は吐き気が強く会話をするのも辛そうな状態で、終日、傾眠状態でした。しかし、麻薬などの内服調整により症状は改善し歩行できる状態になり、A氏から「大学病院にいる時に死にかけた。あのときは死ぬかと思ったけど今は元気になって感謝している。あとどれくらい生きられるかわからないけど家で生活したい」という言葉が聞かれるようになりました。
 A氏の思いを受けて早々に自宅に帰られるよう在宅調整を開始しました。担当看護師が中心となり、訪問診療・訪問看護の依頼、介護保険の申請、事業所・ケアマネの依頼、合同カンファレンスの開催など在宅療養ができるよう調整をすすめ自宅に退院することができました。
 私たちの看護は患者さんの思いからスタートします。その思いが叶えられるよう担当看護師はすぐに行動を開始したこと、また急な依頼でありながら在宅部門が快く引き受けて頂いたことがとても心強く感じた事例でした。
 最後に…A氏は退院後、大学病院に受診をして再度抗がん剤治療ができると言われて再入院をされましたが、その後すぐに急変されお亡くなりになりました。当院を退院し2週間後の出来事です。A氏のご冥福をお祈りいたします。
(小豆沢病院・2015年9月号掲載)