その人特有の要素が受診行動に
先日、法人内の看護活動交流集会を行ないました。その中で長い受診歴のなか糖尿病の中断を繰り返しているAさん79歳、男性、独居とのかかわりを振り返りました。Aさんは一時的にインシュリン強化療法が必要なほど悪化することもあるのですが、もともと新聞記者で民主的な活動家であり独自の運動療法や食事に確信を持っていたため、中断対策も一筋縄ではいきませんでした。
あきらめない看護が売りの当クリニックの看護師・事務職員は、普段から長い中断期間も、地域の方々とのネットワークを生かし、Aさんとの会話やかかわりを継続していました。ある日、アルコールを多飲し体調を壊したAさんの状態に通りかかった職員が気づきました。治療を拒否するAさんに職員は「心配しているから」と血糖、尿糖の測定に応じてもらい、『BS高値、尿ケトン3+』の現実をAさんと共有しました。
事前にAさん対策を医師と話し合い診療開始となりましたが、それでも拒否するAさんに医師は「今日のところは俺に任せろ!俺もがんばるからお前もがんばれ」と「一喝」。診療ののち治療合意にいたりました。自覚症状がつらかったAさんはよほど嬉しかったと見え、「楽になったよ」とみんなに言って帰りました。その後は定期通院をされています。あれほど嫌がっていた採血はHbA1Cの結果を速攻で確認するなど、治療を嫌がっていたのではなかったことが色々わかってきました。生活問診や生活視点でのインタビューも行ない、以前から知っていた金銭面での問題以外にも自尊心や価値観、その人特有の要素が受診行動につながっていることがわかりました。
2014年に発表された糖尿病の中断率は全国の調査で約8%、中断対策・療養指導などの受診支援で中断が防げるのは約60%。漫然と生活問診や中断対策をするのでなく、個々の患者さんに意識的にかかわり職場内の情報の共有を治療に結び付けようと話し合いました。(多摩みなみクリニック・2015年2月号掲載)