東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

在宅看護に大切なこと

 「麻布の三連帯、地上3階地下1階、連隊長は秩父宮様、汽車に乗り込む際憲兵に連れられ仲間に手を振り…。」この話をくりかえし、庭の見える部屋で、できたてのコーヒーをいただく。これが7年続きました。
 Aさんは認知症を患い、夕方になると落ち着かなくなります。介護されているお嫁さんはAさんと1日中一緒でした。この11月に食べられなくなり、積極的な治療はせずご自宅で最期を迎えられました。訪問看護の開始時、お嫁さんは心配だったのでしょう、対応の諸注意の助言のあと、部屋の外から私たちの対応を聞いておられました。当初から、介護負担が予測されたため、訪問診療や、通所介護など勧めていましたが、環境を変えることで認知症の悪化や精神的に不安定になることをご家族が恐れ、話が進みませんでした。本人のお話を傾聴したあとは介護の負担や嫁としての苦労など、訪問終了後の帰り際の立ち話が尽きませんでした。「やっている看護って何だろう。これでいいのか」と思う日々が続きました。しかし、今思うとかかりつけ医への移行や訪問診療への移行、オムツの着用や入浴介助のタイミング等、いつしか、ご家族は「たんぽぽさんが、そういってくれるから」と信頼して任せてくれるようになっていました。
 Aさん、何処もつらくないとにっこり微笑んでくださいましたね。明日も来ますね。と握手をしてくださったのが最期だったんですね。息子さん娘さん、何よりもお嫁さんが本当に私たちに感謝をしてくださいました。今思えば、「いつの間にか私たちを心から信頼してくださっていたのか」と、うれしくてたまりません。
 私たちは、何かをして差し上げることが看護だと勘違いすることがあります。そばにいて、話を聴き同じ時間を過ごす。答えが出ないことでも一緒に考え、そして時を待つ。そんな看護が原点だと教えてくださいました。ありがとうございました。(訪問看護ステーションたんぽぽ・2015年1月号掲載)