東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

“看護師なんて嫌いだ”

 脊髄小脳変性症の70歳代男性Aさんは転倒や誤嚥性肺炎を繰り返し訪問看護が開始されました。
 Aさんは発病するまで八百屋を営まれ、現在独居。同疾患の妹、妹の娘Bさんが毎朝Aさん宅に通い、日中一緒に過ごされ、夜間はAさん一人の生活です。
 介護者のBさんはAさんの頑固な性格と認知機能低下も重なり、一人での介護負担とストレスが大きくなる一方でした。
 ガラス戸で覆われた四畳半ほどの居間に布団と座椅子、こたつの生活。不安定な歩行状態でもサービスの必要性を感じないAさんにとって、看護師は生活形態を崩そうとする厄介な存在のようでした。
 リハビリに対しても「そんなもんは必要ない。自分で動いている。看護師なんて大嫌いだ。月に1回来ればいい」と訪問時に何度か言われましたが、「私はAさんのことが心配なんです。だから来週も顔を見に来たいです。よいですか?」そんな会話を繰り返しながら、まずは担当の私を受け入れてもらうよう訪問を続けました。
 ある日、座椅子からの立ちあがりが困難になっていたため、危険性を説明し、滑り止めマット使用、ガラス戸をお風呂用マットで保護。ベッドやタッチアップを入れ、安全な環境に整えました。
 Aさんが困っていることに気がつき、直ぐに対応したことが看護師の受け入れにつながったのか、それ以後、リハビリや環境評価のため、セラピストを導入、看護師訪問も週2回に増えました。
 自主リハビリも積極的に行え、転倒も見られなくなりました。食事も指示のミキサー食を守られ、誤嚥性肺炎も起こされていません。現在はデイ、ショートステイ利用ができ、今では笑いながら一緒にリハビリが行えています。(鐘ヶ淵訪問看護ステーション・2014年8月号掲載)