東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

その人らしく安心して

 「おじいさん、お熱出ちゃったの?」―私の持つ診療所の携帯電話が鳴ると、7歳になる息子が言います。病棟や透析室で9年ほど働いた後、出産を機に荒川生協診療所に移動して4年になります。
 異動したての頃、看護師が交代で持つ携帯電話が鳴り、私が対応のため外出しようとすると泣いていた息子も、今では患者さんを心配してくれるようになりました。今は3人の子どもを育てながら副主任として働いています。
 荒川生協診療所では外来のほかに訪問診療も行っています。通院できなくなった方や最期まで家で過ごしたい方、在宅緩和ケアを希望する方などの所へ医師と看護師で訪問しています。
 お正月が明けてまもなく、自宅でお看取りした女性がいます。80代で、がんの化学療法のため大学病院に通院していましたが、在宅緩和ケアを勧められ診療所に紹介されました。隣に住む娘さんが介護しており、本人も娘さんも最期は病院を希望していました。
 呼吸苦を訴えるようになった頃、そろそろ入院が必要な時期かと考え、娘さんに思いを聞きました。娘さんは「まだ大丈夫です。苦しいと言われるとどうしたらいいかわからなくなることもあるけど、落ち着いた時間もあるし家でみられます」と言いました。その後、女性は娘さんが隣の家に帰っている間に息を引き取りました。娘さんの連絡で、医師と私が家へ向かい、一緒にお看取りをしました。
 最期は病院を希望していた娘さんから「病気をしても頑固な母と喧嘩したり、大変なこともあったけど、最期は家で眠るように逝くことができて良かった」と言われました。
 住み慣れた家で最期まで過ごしたい方もいれば、病院で最期を過ごしたい方もいます。そして、その気持ちは最後まで揺れ動いています。
 その時を誰とどう迎えたいか、家でも病院でも場所はどこであっても、患者さんと家族がその人らしく安心して過ごせるように、診療所がそのお手伝いができるよう関わっていきたいと思っています。
(荒川生協診療所・2014年2月号掲載)