東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

最期まで、その人らしく

 91歳の女性が誤嚥性肺炎・尿路感染症で入院。数日は生命の危機的状態でしたが、治療が進むに連れて活気を取り戻しました。少々難聴ですが社交的な明る い方で、長年農業を営み、つい先日まで庭で草むしりをしていたというだけのことはあって、少しずつADLはアップしました。
 今後について話し合った結果、80歳台の介護者である(腹違いの)娘夫婦は「施設に預けるのはかわいそうだから家で看ます」と自宅療養を決意。回復期リ ハビリ病棟に転科し、ご本人も家に帰るためと頑張ってリハビリに取り組んでいましたが、ほぼベッド上の生活を余儀なくされることになりました。再度、ご家 族と面談を持ちましたが、在宅療養という方向性は変わりませんでした。
 しかし、家屋評価の際に今までお会いしたことの無いご家族が登場し、「このような状態では家で看るより施設の方がいいのではないか」という発言で状況は急展開。三度目の面談をした結果、自宅には帰らず後方病院や施設を探すことになりました。
 この一件から、キーパーソンや主介護者だけではなく、キーパーソンや主介護者に影響力を持つ方の存在を知っておくことも重要であると思うようになりました。
 ご家族にとっては今までの自立していたご本人とはまったく違う状態、初めての介護、高齢夫婦の介護…など、自宅で療養することへの不安要素はたっぷり だったと思います。でも、それを軽減できるような在宅サービスをしっかり使えば、家に帰ることができたであろうという思いが今でも消せません。
 最終的にこの女性は老人保健施設に入所となりました。持ち前の明るさで周囲の人たちに愛されながら、元気に過ごされていることを願っています。
 人生の終盤に差しかかった方との関わりが増えている中で、最期までその人らしい過ごし方ができる、また家族の後悔が少ない決定ができる支援をしていきたいと考えています。
(みさと健和病院・2012年12月号掲載)