東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

Aさんの願い、迷いつつ選んだが…

 Aさんは長年糖尿病と慢性閉塞性肺疾患(COPD)で在宅酸素導入し、生保を受給しつつ1人暮らしをしていた。中野共立診療所往診患者であった。離婚し離れて暮らしていたが娘とは連絡を取りあっていた。
 8月にCOPDが悪化、慢性心不全急性増悪のため緊急入院となった。酸素10リットルリザーバーマスク使用、ご本人にも病状をお話しし気管挿管・人工呼吸器が必要と話した。
 「もうやるべきことはやった、いつ死んでもいいんだ」「機械につながれながら生きることはいやだ」と話されていた。友人への遺言をしたためるなど、覚悟のほどが垣間見えた。
 いよいよ病状が悪化、電話で娘さんに連絡を取り「人工呼吸器をつけなければ明日にでも亡くなるほど厳しい」と説明をした。娘の意向としては「呼吸器をつけてほしい」ということだった。
 本人の意志とは違っていたため本人にきちんと伝え、もう一度意志確認をすることとした。その後Aさんは、「娘が言うのであればやってもいい…」と承諾し た。そして「家族に死んだ後のことを話したい」と電話に出られ、苦しい中でもとぎれとぎれに通帳の置き場などを伝えていた。
 気管挿管・人工呼吸器装着後は、呼吸器の設定調整を行ってもAさんの呼吸と機械が同調しない状況の中では、「本当に良かったのか…」と逡巡しつつも、A さんのがんばりが見え「Aさんの最後の願い…」と支え続ける看護になった。そして1週間、治療の甲斐なく永眠された。
 この1週間の間に、初めて娘さんがお見舞いに現れた。これを待っていたのではないか!という瞬間だった。娘さんは、Aさんにとって「自慢の娘」で、大好きだったんです!
 これからも「本当にこれでよいのだろうか…」と悩みつつの選択を迫られることが多々あると思う。それぞれの「願い」がどんな形でかなえられるのか…、悩みつつもしっかりと一人一人の人生に向き合い続けていきたい。
(中野共立病院・2012年11月号掲載)