一日一日を大切に生きる
都立神経病院から依頼を受け、往診に伺うようになったのは、2003年5月からです。慎大郎君は生後3カ月で福山型筋ジストロフィーの診断を受け、以後肺炎で入退院を数十回も繰り返している19歳の青年でした。
慎大郎君の地域支援体制は、都立神経病院を基幹に、地域主治医は府中診療所。療育センター、保健所、複数のヘルパー事業所、訪問看護、訪問リハビリ、入浴サービスなど、多部門にわたります。写真集にもあるように、慎大郎君の家を訪れるスタッフは100人という月もあるようです。
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旅行やコンサートに出かけるなど、イベントも多い慎大郎君。往診時にも、「アシタエンソク!」声にはならない声と、キラキラした瞳で私たちに教えてくれます。そして、明るく前向きな、ひたむきなお母さん! 慎大郎君の周りに出来ている大きな輪は、お母さんの人柄によるものといっても過言ではありません。
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一日一日を、慎大郎君らしく大切に生きる姿に、私たちはいつも励まされます。この一家の日常を支える歯車の小さな一部となれることは、私たちにとって、大変幸せなことです。それは診療所以外の他のスタッフも同じ思いでしょう。
菊池先生は、その貴重な数々の一瞬を、本当に素敵な写真集にして下さいました。どの写真も、微笑ましかったり、ほろっとさせられたり、また、考えさせら れながらも心温まるものばかりです。是非、前作2冊とともに、お手にとってご覧頂きたいと思います。
(府中診療所・2012年7月号掲載)
菊池和子写真集『命の限り筋ジストロフィーの青年と家族』
発行‥現代写真研究所出版局(TEL03―3359―7611 FAX03―3355―6593)
定価2、000円+税
*菊池和子さんは、各種研修会等で在宅医療の現場を知らせ、仕事のもつ社会的意味をお話するスライドトークをしています。問い合わせは、東京民医連。