患者とつなぐタクティールケア
タクティールケアは相手の体にやわらかく包み込むように触れるケアであり、肌と肌とのコミュニケーションを通して不安な感情を取り除いたり痛みを和らげたりする効果があり、特に認知症の方に実施することで様々な症状が改善するといわれています。
健和会臨床看護学研究所主催のタクティールケア研修終了後、脳血管障害・肩手症候群による麻痺(まひ)側上肢の疼痛・手指の浮腫や熱感・腫脹を症状とす るA氏に麻痺側上肢の苦痛症状緩和を目的として両手タクティールケア+温冷交代浴を実施しました。
A氏は几帳面な性格であり常にリハビリの時間を気にされていたため、タクティールケア当日に氏と時間調整をしながら、午前のリハビリ終了後や1日のリハビリ終了後に実施するよう心がけました。
タクティールケア実施前は温冷交代浴は時折拒否がみられていましたが、両手タクティールケア+温冷交代浴の拒否は見られず終始穏やかでした。実施中は右 上肢の症状以外にめまいや頭痛、同室者のいびきによる不眠が続いていること、自分で対処していることなどについて話されることもあり、数回実施後は主観的 評価ですが、タクティールケア実施前よりA氏からの挨拶、非言語的コミュニケーションも含め「今日も実施してくれるのか」と積極的な声がかかるようになり ました。
両手タクティールケア+温冷交代浴直後は熱感・浮腫が軽減する効果もみられ、A氏の肌に直接手を触れるタクティールケアそのものがA氏とケア側である私 自身「温まる、気持ちのいい体験」になり、自分自身も改めて利用者の手に触れる機会を持つよう意識するようになりました。
これからも利用者と看護師をつなぐ有効な方法としてタクティールケアを継続していきたいと思います。
(柳原リハビリテーション病院・2012年2月号掲載)