東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

終末期患者の家族と向き合って

 在宅で介護を行うのは主たる介護者であり、患者が病状の変化で入院されたら介護者のサポートを行い、終末期をどのように支援するか求められます。しかし、なかなか患者や家族の意向に添った適切な援助ができないのが現状です。
 Aさんは80歳代の女性で、脳梗塞後遺症、閉塞性動脈硬化症、褥瘡がありました。家族は60代の息子さんだけです。在宅歴は約4年になります。
 Aさんの入院後、息子さんから、病棟のケアや介護のやり方が在宅の介護スタイルと異なる事に、不満や質問がよくありました。息子さんは在宅において、経 管栄養や褥創処置等に精通しており、介護の意識の高い方でした。私たちは、時に「病棟の実情を知らない、細かい事を気にする家族…」という認識で接してし まうことがありました。
 終末期ではありましたが、入院期間が長くなるにつれ、息子さんの表情が険しくなってきました。カンファレンスで情報交換し、息子さんの思いや、後悔の無 い看取りをして頂くようにとの看護方針をたてました。その後はなるべく在宅での介護法を取り入れ、息子さんと一緒に看護するつもりで意見交換し、積極的に 関わっていくようになりました。
 何気ない日常会話からもコミュニケーションを図っていきました。息子さんからは「また連れて帰ると、母と約束して入院させた」「しかし状態も悪く、注射 の管理や自宅で看取る事は困難と言ったが、約束が守れなかった状況がつらい。母に嘘をついてしまった」「一日でもいいから連れて帰り、お別れをさせたい」 との思いが聞かれました。
 この訴えをきっかけに『今、私たちは何をするべきか、してあげられるのか』を論議し二泊三日の外泊を支援する事ができました。
 息子さんから「私の願いを叶えていただき、思い残す事はありません」と感謝の言葉があり、自分たちの看護の関わりが間違いなかった事を実感しました。
(芝病院・2010年11月号掲載)