東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

「あきらめないで…」

 昨年の春、一人暮らしのBさん(80歳代・男性)が、当クリニックに受診されました。血糖300mg/dl以上・HgA1c10・0%以上のBさんは、 インスリンの自己注射が必要となりました。Bさんは認知症もあり、低血糖などの事故を考えると入院での導入が必要と考え、入院を勧めました。
 しかしBさんは、何とか入院しないで頑張りたい。「入院したら僕はおしまいです」との、強い思いがありましたので、外来通院で自己注射と血糖測定の指導を行うことになりました。
 これらの手技を取得するまでに、2カ月を要し、10回以上の指導を重ねました。その甲斐あって、現在、通院するBさんの姿を見るたびに、「あきらめないでよかった」と思います。
 高齢者社会が急速に進み、家族様式も変わっている中、高齢者の外来治療に、家族のフォローがなかなか得られなくなっています。それに合わせ、外来看護のあり方も変わってきています。
 高齢者と関わるとき、今までは看護サイドで問題解決のため、一番負担のない方法は何かを考えてきました。しかし、高齢者看護はそれだけでなく、高齢者の能力や可能性を見極め、その能力を引き出すためのアプローチが大切であるといわれています。
 今回、Bさんが自己注射と血糖測定の手技を取得できた一番大きな理由は、同じことを何度でも指導する私たち看護師に対して、頑張って応えようとするBさんの姿が、私たちの「あきらめない看護」につながったからではないかと思います。
(多摩みなみクリニック・2010年10月号掲載)