東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

訪問看護は生きる希望!

 ALSは全身の筋力が低下し、呼吸筋の麻痺を起こし、死にいたる難病です。気管切開し人工呼吸器を着ければ生き続けることが可能ですが、生涯にわたって介護が必要なために家族の負担を考えて、選択しない方も多いのです。
 7年前に訪問を開始したAさんも、当初から鼻マスク式の呼吸器だけでいけるところまでいって終わりにしたいと、意思表示をしていました。ケア内容は、ヘ ルパーと二人がかりで車椅子に乗せ、トイレへ移動して摘便。呼吸器は外していくので、途中で苦しくなったら、腹部を押して呼気介助、リビングのテーブルに 腹ばいにしてパンツをはかせ、ベッドに戻って全身のストレッチと関節可動域訓練と呼吸リハビリ…90分、毎日の盛りだくさんのケア。
 これらのケア方法は、すべて本人がこだわっての考え。力まかせで、転落のリスクも高く、何度も変更を提案しましたが、断固拒否。限りある命ならば、Aさんの思うようにしてあげたいと頑張ってきました。
 しかし、ヘルパーが腰を痛めて次々と辞めていくなど問題が多く、保健所・ヘルパー事業所・訪問看護ST・ケアマネ・主治医等のチームで話し合いを重ね、 Aさんの生活を守るという共通目標でケアを構築し働きかけました。次第に、かたくなだったAさんも、安全なケアの提案を受け入れるようになってきたので す。
 そして、5年の年月が流れた頃、Aさんの気持ちは「生きたい」に変わり、気管切開し人工呼吸器を着けて自宅で生活されることとなりました。今では、ブログで療養生活を公開し、娘さんが来春看護師になることを楽しみにしています。
 Aさんと家族に「生きる希望」を生み出したケアチームの一員となれたことは、私達の財産となり、Aさんの笑顔をみるたびに、人間の生命のすばらしさを感じずにはいられません。
 どんな困難な状況でも人間には乗り越える力があるんだと教えられた訪問看護。これからも生きる希望を生みだす看護の現場でありたいと思います。
(にしたま訪問看護ステーション・2010年9月号掲載)