東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

経口摂取にこだわって

 介護老人保健施設志村さつき苑は、開設して5年が過ぎました。
 療養型病床が削減される中で、病状が不安定な方の入所依頼が増加しています。
 高齢者が体調を崩さず安定して過ごしていくには、どれだけ口から食べられるかが重要です。入所している利用者を見ても、食欲があり、しっかり食べられる方は強いと感じます。
 Bさん94歳は、脳梗塞と誤嚥性肺炎を繰り返し、全介助レベルで入所しました。リクライニング車椅子に座り、アイスマッサージをしながらの食事介助にな りました。入所後3カ月間で2回も誤嚥性肺炎で入院。主治医からは「また誤嚥性肺炎を起こし2週間で入院になるだろう」と言われ、逆に奮起。少しでも長く 施設生活ができるよう援助しようと、看護・介護・リハビリが協力しチームで関わっていきました。
 まず、検討したのは食事形態です。今までのミキサー食は作る過程で水分を加えるため量が増えること、量の割にはカロリーが確保できないこと、トロミで味 が落ちること、量が多いため食事の途中で疲れてしまいムセも多くなり、全量摂取が困難であるなどの問題があります。
 そこで、全粥に水分を加えずミキサー食を作ることを検討しました。職員がハンドミキサーを使い、ペースト状にした全粥を汁物や副食に混ぜることでトロミも出て、飲み込みやすく味も損なわず食べることが出来るようになりました。
 Bさんは、発語もほとんどない状態でしたが、周りの声かけは分かっています。食べることには意欲を見せ、1日3回食堂で、他の利用者さんから応援されな がら全量摂取を続けました。その結果、肺炎などで入院することもなく、最長1年間、継続して施設で過ごすことができました。
 残念ながら昨年末に、何度目かの脳梗塞で入院し亡くなりましたが、息子さん夫婦は、ぎりぎりまで皆に囲まれ施設で過ごすことができ良かったと言ってくれ ました。これからも、Bさんが頑張って食べていた姿を思い出し、経口摂取にこだわり、あきらめずに援助していきたいと思います。
(介護老人保健施設志村さつき苑・2010年3月号掲載)