患者に寄り添う大切さ実感
Sさんは、運送業で、両親と3人ぐらし、住宅ローンなどの返済もしながら一家の生活を支えている48歳の男性です。末期腎不全のため他院より紹介され4月に当院を受診しました。
担当医より入院治療を強く勧められましたが仕事の関係上、入院を拒否し通院治療となりました。7月に入り腎機能がさらに悪化しシャント造設手術予定とな りましたが、本人は仕事を理由にキャンセルしました。担当医からは、一日でも早く決心をつけ連絡するように説明されましたが、翌々週になっても連絡がない ため、自宅へ電話をしました。
1度目は不在で、2度目は電話に出てくれませんでした。3度目にようやく本人と話をすることができました。体調の確認、不安や困っていることがないかな ど尋ねましたが、「体調は、悪くないです。」と、話されたきり、あとは無言のままでした。症状を説明し、体調悪化すればすぐにでも受診するように伝えるの みとなってしまいました。
担当医は、症状のない人はよほど身体的苦痛がない限りわからないのでないかと話をしていました。
Sさんは、寡黙な人で質問に対しては返答されるが、表情が硬く、症状がないため実感が湧かず、病気を受け入れられない状況もうかがえました。また、ローン返済のために病気にかまっていられない状況も一方ではあるのだろうと思いました。
電話で話すことができてから、本人にどう伝わったのか、とても心配でした。電話をしてから2週間後に受診されました。本人は、血液透析を希望され、9月 にシャント造設をしました。今後は仕事を続けながら夜間透析を受けることとになりました。
症状があまりないために、病気の受け入れができない患者さんに対して寄り添ってかかわる大切さを感じました。また、今の社会情勢も反映して、生活してい くのに精一杯の方が多い。病気が重症化してからでは遅いので、早期の治療に少しでもつながるように、忙しい外来だが、今後も寄り添ってかかわることを大切 にしていきたい。
(みさと健和クリニック・2009年12月号掲載)