辛かった体験 次に生かそうと
Aさん(62歳)は2年ほど前に「間質性肺炎」の診断を受けていたが、これまで症状も無く過ごされていた。年末に呼吸苦が出現し入院となり、ステロイド 治療が開始された。一時的には改善するが、波が襲ってくるように症状が悪化していった。不安と苛立ちをぶつけてくるAさんに、看護として出来ることは何か 悩み、スタッフはひたすら訴えを聞き背中をさすった。
10リットルの酸素を吸いながらの生活。車椅子に移るだけでも酸素飽和度は60%台となる。
つらい入院生活の中でも入浴が楽しみとのことで、少しでも安楽に入浴出来るように考え、介助した。
ベッドサイドは、Aさんが必要なものを苦しくならない姿勢で取れるよう工夫がされた。
カンファレンスでナースコールを待たせない、誰が対応しても要求に見合った対応が出来るよう意思統一した。
また、愛犬に会いたいというAさんの願いに応え、主治医が付き添って駐車場で面会を行った。
外泊や外出で気分転換が出来ないか家族と相談し、自宅への外出を企画した。看護師が休みを返上して外出に同行した。
桜の舞う季節に、久しぶりの我が家での家族団らんを過ごした。なんとか生きてほしいと願う家族の支えに応えようと「人工呼吸器をつけてでも生きたい、生 きることは出来ないか」と葛藤し涙を見せるAさんだった。しかし、医師の説明で呼吸器をつけても改善しないことを知り、人工呼吸器は装着しないことを選択 した。
5月の連休明け、再度の外出を計画していたが、実らず…眠るように亡くなった。
治療が実らず苦しむ患者さんを前にし、無力と感じることも多いが、この経験をまとめ次の看護につなげ発展させ、患者さんに報いようとみんなで話し合っている。
(東葛病院看護師・2009年6月号掲載)