出来ることを見つけ生かす
タクシーの運転手。入院2週間前、勤務中に衝突事故を起こし、仕事が可能かどうかの診断書を貰うために受診をし、その時の頭部CTにて脳梗塞と診断されました。
入院直後には、脳梗塞による意識障害のため(高次脳機能障害があり、記憶、視覚の障害、失読)、無断で帰宅し、近所の行きつけの居酒屋に行って飲酒した り、その後は、病室でタバコを吸ったり、文字が読めないため内服管理が出来なかったりと、今後元の生活に戻ることは困難な要素でいっぱいでした。
当初は弟さんの住む神奈川県に転居し、弟さんの近くで住むことが目標でした。しかし、リハビリを継続し、病棟での生活に慣れるに従い、見当識、記憶、注意力、集中力などの障害が改善されてきました。
それならば、住み慣れた中野区弥生町での生活の方が本人にとってはいいかもしれない、本人もそれを望んでいるわけだし…と、「住み慣れた自宅での独居」方針を決め、さらなる取り組みが始まりました。
意見書にもこだわりました。要介護認定が出ればサービス調整をして、24時間どこかには人の目を入れることができます。
病棟では日常の生活訓練が始まりました。内服は絵でマークしたものであれば朝、夕の区別が出来て自己管理できるようになりました。お風呂は銭湯での入浴を介護スタッフとまずは行きました(一緒に入ったんです)。
その後院内で練習し、最後はお金も持って1人で行くことができました。
自宅周辺の診療所、コインランドリー、スーパーまでの外出訓練は、リハビリはスタッフと共に行ない、道に迷うことはなくなりました。
転院後2カ月、自宅退院が実現したのです。現在介護度3の認定を受け、目いっぱい介護保険を使い生活していらっしゃいます。
08年11月から始まった回復期リハビリ病棟は、「高次脳機能障害をどう理解し実践につなげるか」学びと、自分たちの今までのありようとから変容を迫られる実践でした。
このAさんから学んだことは「出来ることを見つけて、それを生活に生かしていけるようすること」でした。今後も沢山の患者に生かして生きたいと思います。
(中野共立病院・2009年4月号掲載)