NST、緩和医療に関わって
人工骨頭のOPE後創感染を起し、2007年から寝たきり状態となってしまったA氏は、治療のために私が働いている外科病棟へと入院されました。入院前 から37℃台の発熱が続き、入院という環境変化により認知症も進み、入院当初は5割ほど摂取していた食事も1割も摂取できないほどになってしまいました。 同時に嚥下機能も落ち、上手く食べものも飲み込めず口腔内に溜めてしまう状態が続くため、誤嚥のリスクを考え禁食になりました。
創治癒を促進するためにも絶対的カロリー不足な状態であるためIVHを挿入し、栄養は確保することが出来ましたが、A氏の介護を自宅でしていた娘さんは 経口から食事が出来ない状態になったことに対して「A氏は食べることが好きで家では私が作ったゼリーなどおいしいといって食べてくれたのに…」とショック を受けられていました。
毎日病院にきて懸命に介護している娘さんをみて、私はA氏においしそうに食事をしてもらいたいと思い、NST(栄養サポートチーム)でA氏の症例を検討 したところ、STの評価はティースプーン半分を1回量とし、あごを閉じさせ飲み込みを促せば食事することは出来るというものでした。
A氏は好きなゼリーをおいしいといって召し上がれましたが食べても1口2口でした。そんなA氏の状態から食事は「お楽しみ」程度とし、娘さんには介護力があるので胃ろうを造設し、自宅で経腸栄養をすることになりました。
娘さんは初め胃に穴を空けてそこから食事をすることに対し抵抗がありましたが、消化管から摂取することにより胃腸が動き食欲が増し、生理的な形で栄養を 摂ることに対して理解を示していただけ積極的に胃ろうの手技を学んで自宅へと帰ることができました。
近年は高齢化が進み、嚥下機能に問題をもつ患者様が多くなってきました。そんなときに生きる為に必要な「食事」をどのようにとるのか様々な方法の中から その患者様・家族が望んでいる形に一番近い状態へもっていけるようこれからも関わっていきたいと思います。
(東京健生病院看護師・2009年2月号掲載)