東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

HCU患者家族へのケア

 80歳代男性のAさんは「肺炎・COPD (慢性閉塞性肺疾患)」で入院され様々な治療が行われましたが、肺炎の改善はみられませんでした。本人は入院時より挿管を拒否しており、奥様も「本人の意 志を尊重したい」と話し、人工呼吸器管理が適応でしたが、NPPV(非侵襲的陽圧喚気法)での呼吸管理が行われました。
 しかし、呼吸状態は徐々に悪化し、NPPVでは限界となり、気胸を発症し、皮下気腫は顔面から陰嚢にまで及びました。本人は判断できる状態ではなく、奥様の同意のもとに挿管しました。
 病状が改善することを期待していましたが良くなる兆しはなく、本人の意に反し挿管したことを奥様は後悔していました。“自分が判断したことはよかったのか、よくなってほしい”という思いを話されました。
 後悔したくないと1日もかかさず面会に来る奥様に、患者様本人のケアはもちろん、奥様の精神的なフォローにも気を配るようにしていきました。奥様の話を よく聞き、〝話すことは否定しない〟〝奥様の判断は間違いではない〟という思いで関わり続けました。
 数日後、奥様に見守られ永眠されました。奥様は最期の数日間は状況を受け入れられ、落ち着いて最期の時を迎えることができました。
 急性期は治療が優先され、機械に囲まれた冷たいイメージかもしれません。不安でいっぱいの家族の思いを理解する・支えていくということを忘れずに、医療者と家族に開きがないように歩み寄った看護をしていきたいと思います。
 後日、奥様が病院に挨拶に来られました。御主人が亡くなった病院なんて本来なら足を踏み入れたくない場所であるはずなのに、スタッフ宛にお礼の手紙をい ただきました。助けられなかった生命であったけれど自分たちのケアが少し報われた気がしました。
 HCU:high care unit
(みさと健和病院・2008年10月号掲載)