経済的な問題に気づくこと
整形外科外来を受診された鎖骨骨折のAさんは68歳、初診時からイライラした感じで、待ち時間が長いことや、レントゲンを毎回とることに不満を訴えていた。
固定をしているので、骨折部位の安静のため、固定を自分ではずさないこと、更衣は病院ですること、週一回の定期受診をすること等を指示しても守れなかっ た。そのため骨折が治癒せず遷延していた。看護師は初めの頃、指示を守ることのできない問題患者さんと捉えていた。
しかし、看護師が受診時に患者様の清拭をしていると、「経済的に苦しく受診ができない、精神的に追い込まれ7~8㎏やせた」と話された。すぐに診療所に 置かれている生活相談窓口を紹介したが、経済的なことを相談するのは男として恥ずかしいと拒否された。しかしその後もう一度相談することを強くすすめたと ころ、思い切って相談された。
A氏は骨折されるまで日雇いの警備員をしていたが、骨折により仕事ができなくなり、困窮していたのだった。相談によって手続きをされ、骨折の治療が必要な期間、安心して治療が受けられるように生活保護を取得できた。
その後とても明るい表情となり、体重も増え骨折も治癒にむかった。治癒が遷延したのは栄養不足であったことも関係していたと考えられた。
格差社会の中で経済的な不安を抱えている人が少なくない。後期高齢者医療制度もはじまり、ますます医療費の負担が重くなっている。このA氏のように指示 を守れない患者を、表面的に問題患者として片付けず、いつも患者の態度に注意しことばに耳を傾け、経済的な問題が背景にあるのではないかと考え援助するこ とが必要だと思う。
(大田病院・2008年9月号掲載)