東京民医連

ニュース

みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

2024年度東京民医連経営検討会
かつてない経営危機を民医連に
結集した力で乗り越えるとともに、
「オール地域」の取り組みを加速させよう!

 東京民医連理事会は、2024年12月14日、15日に、新宿区のビジョンセンター西新宿において経営検討会を開催しました。31法人から292人が参加しました。
 今年の獲得目標は(1)民医連綱領の原点に立ち返り、実現に向かって、医療・介護活動のあり方をあらためて確認する。その上で、管理運営(マネジメント・全職員参加の経営)において、この間の経営困難法人から、ともに学び、参加者で課題を共有し、相互に質を総点検し、この困難を突破するための知恵を出し合う機会とする。(2)急激な経営悪化と危機的な経営の現状を正確に認識し、様々な医療情勢や診療報酬改定による影響を踏まえた経営戦略(経営構造転換)・リポジショニングを構築するための議論を行う。(3)これら議論と24年度上半期到達を踏まえ、25年度予算大綱の策定に向けた課題を整理する。(4)すべての法人で中長期の医療介護構想と経営計画を策定(見直し)する契機とする。
 以上4点です。

 

記念講演
「選択と集中」
ポジショニングに基づく中長期的な戦略を

 記念講演は、尾形裕也九州大学名誉教授より、高齢化に伴う医療介護ニーズの複合化の中、私たちの事業所に求められる役割を学び実践するためにはどうすべきか「病院戦略論」についてお話しいただきました。医療機関は多様な有資格者専門職集団の職能別組織であるために、他部署との交流を避け独自の業務に集中するタコツボ化が進む危険性があります。医師がリーダーシップをとって求心力を高めること、職員が集まらない病院は患者も来ないと肝に銘じて職員を大切にする組織になることが求められます。組織の生き残り戦略のポイントは「環境変化に適応し進化する」こと。いかに構成員の能力を最大限に引き出すかが重要です。
 組織のミッションに基づく将来のビジョンにどんな戦略で向かっていくか。「戦略の失敗は戦術では補えない」ということを念頭に、あれもこれもではなくあれかこれかの「選択と集中」、ニーズや情勢に合わせ、地域医療構想、ポジショニングに基づく中長期的な戦略を立てることが大切であると話しました。

 

基調報告
 東京民医連は、コロナ以前から赤字構造を脱却できていなかった法人が多い中、コロナ後の情勢の変化で困難に拍車がかかりました。
 基調報告では、宇留野良太経営委員長より、情勢と経営状況、経営困難法人の対策と教訓、事業と経営を守り抜くための当面の実践課題(外来機能の総合的強化、病院の経営構造の分析と対策、在宅強化、連携のあり方、県連機能強化)などが報告されました。かつてない経営危機を民医連に結集した力で乗り越えるとともに、今の経営危機の根本に横たわる政策的・構造的な問題に対し「オール地域」の取り組みを加速することが強調されました。

 

指定報告
 指定報告は全体で3本でした。小豆沢病院の菅原良平事務長は、病棟転換で収益改善した経験を基に、収益増と合わせて費用減へ取り組み、更なる改善へ「どうやったらできるのか」「本当に無理なのか」の視点で議論をしたと話しました。
 谷保駅前相互診療所の伊藤龍事務長は、在宅医療から見える経営上の視点として、経営改善の取り組み、法人の力も活用し相手の要望に応えることで選ばれる事業所になること。職員の智恵を結集するため行っている職員アンケートについて報告しました。
 江古田沼袋診療所の小林和苗事務長からは診療所の取組について、宣伝の重要性と、所長を中心に「患者さん第一」で職員が一致団結し取り組んできた経験が話されました。

 

分散会
 分散会は、事前レポートをもとに病院、診療所、薬局法人に分かれて行いました。
 上半期の経営到達を受けて自法人・事業所の状況を評価・分析し、共同組織を含めた地域一体的な活動でどのように患者・利用者を増やしていくか、次年度予算作成に向けたアクションプランなどを討議しました。
 限られた時間でしたが、他法人の課題や取り組みから学び、自法人に活かせる議論となりました。

 

講評・まとめ
 千葉啓顧問公認会計士からの講評では、2024年度上半期の経営状況を振り返り、まさに経営危機であり「構造的な経営悪化」だと正確に認識すべきと強調されました。2025年度の予算作成へ向け、改めて中長期経営計画に基づく必要利益を重視すること、東京民医連として単なるダウンサイジングではない「選択と集中」の議論・方針化を行うことが提起され「明日から行動変容を」と呼びかけられました。
 西坂昌美事務局長のまとめでは、第6次長期経営計画の最初の2年間である今、その先の10年はどのような時代になるのか。民医連がどのような役割を果たしているのか議論し、次の世代にどう民医連運動を引き継ぐかが重要であることを示しました。県連として経営困難法人に寄り添ったまとめと教訓を多くの法人で活用するよう呼びかけました。また、組織力を活かし職員を信頼してこの困難を乗り越えていこうとまとめました。

 

参加者の声
 参加者からは「危機的状況をリアルに認識した」「職員の団結を図り、地域、共同組織に目を向け共同して医療介護要求にこたえていくことが大事」「法人の魅力や弱点を見つめ直し、地域の特性やニーズに合わせ、今できることをまずはやってみる。みんなで振り返り、修正し、スピード感を持って実践していきたい」「お互いに学び合える頼もしい環境にありながら、その強みを活かしきれていない。綱領実践、強みを活かす!そうした差別化、区別化を目指せたら」という声が上がっています。