福島のいま…事故後13年目の現地へ
当事者の声を聞き、復興の意味を学ぶ2日間
福島のいま…事故後13年目の現地へ
当事者の声を聞き、復興の意味を学ぶ2日間
看護師17人が、10月29日から30日に福島フィールドワークに参加しました。
現地では、浜通り医療生協の菅家新理事長と岩井眞美看護部長に案内していただきました。復興とは、単に街をきれいにすることではなく、それまでの何気ない日常、お祭りや文化や生業、人のつながりを取り戻すこと。地震という自然災害だけでなく、人災と言える福島原発事故と利権によって、地元の人のいのちがないがしろにされてきた事実を許さず、語り継いでいくことの大切さを心に刻んだ研修となりました。
すすむ復興と感じた違和感背景にみえかくれする格差・人災
さいと訪問看護ステーション統括所長 鈴木 明理
東日本大震災から13年、震災後の福島を見る機会をいただきました。
被災者の方から話を聞いて…
地震で停電となり、情報が入ってこない中での急な避難指示、「とりあえずの避難」をしてから13年が経ちました。当時は原発事故が起きている事実を知らされておらず、避難する目的、いつまで避難が必要なのかもわからないまま、町を出されました。2~3日で戻るつもりでいたそうです。何も持たず、寒い中毛布1枚で避難所をいくつも移動した経験を語ってくれました。避難所の生活はプライバシーがなく、洗濯もできず、風呂には入れず、トイレはいつも長蛇の列、節電のため夜の暖房は消されてしまい、体も心も大きなストレスに何年もさらされ続けました。直接話を聞くことで当時の過酷な状況をより感じることができました。
今は復興住宅へ移動されたそうですが、私が違和感を覚えたのは、家賃、駐車場代は自己負担だということです。また地域によって保障の格差もあり、格差が地域のコミュニティーを壊しています。皆、苦しく辛い思いを抱えているのは一緒です。復興には周囲との協同が必須ですが、コミュニティーも壊されてしまいます。天災ではなく人災が起こした影響です。
いわき震災伝承未来館や、津波による被害を受けながらも全員避難ができた請戸小学校を見て
津波が来る前に「海の底を見た」と普段とは違う異常な景色に驚愕し、「黒い壁が押し寄せた」と生々しい恐怖体験を聞くことで改めて災害の大きさを痛感しました。全員が避難することができたのは、日頃からの災害を想定した訓練や、対策の話し合い、周囲とのコミュニケーションができていたからです。過信せず日頃からの準備を呼びかけていきたいと思いました。
福島の地震、津波、原発事故から、多くのことを学ばせていただきました。
原発に「安全」は絶対にありません。以前は原子力が明るい未来とうたわれていましたが、一瞬にしてわたしたちの未来を壊します。廃炉の問題も解決しないまま、人が扱えない原子炉に原発再稼働はありえません。今回の事故では、最悪の事態は免れました。もし、冷却ができなかったら。放射能が陸に向かっていたら。北朝鮮のミサイルが原発にきたら。考えるだけで背筋が凍る思いです。再生可能エネルギーの普及に日本全体で必死に取りくむことの重要性を痛感しました。
研修ではメディアが伝えない側面を知ることの大切さを実感し、この教訓を風化させず、自分の言葉で伝え続けることが私たちの役割だと思いました。
原発さえなければ……私たちにできることは?
東葛病院ER・総合診療センター師長 永倉 碧
事前学習で福島震災のDVDを視聴しました。震災から4年後自死が増加。20歳以下の自死は全国1位。児童虐待やDVも震災前の4倍。被災者6700人の内、半数がPTSD発症との報告に、「なぜ福島の震災では悲惨な現状がつづくのか」を課題にフィールドワークに臨みました。
原発さえなければ…
避難生活をしていた方のお話で「原発からの距離だけを指定され、何度も理由を知らされずに避難所を変えなければならなかった。靴を枕に毛布1枚で過ごした」精神的な影響を受けざる負えない福島の避難生活を知る事ができました。「原発さえなければ」という言葉が印象的でした。また、福島原発設置時に政府によるポスター制作、原発賛成の家庭は賛成の札を貼ることで、賛成・反対が可視化され、反対の人は村八分にされていました。原子力災害伝承館に、福島の小学生が書いた原子力発電所が良いものとする習字・作文の展示がありました。一部の人間の営利の為に、反対派への差別、教育にまで入り込んで推進していく、第二次世界大戦に突入する日本と同じ構図がみえました。
復興のためにできること
1号機内の高放射能デブリなど、放射線廃棄物の処分、そして現在稼働している原発、これらの問題の解決なくして復興とは言えません。職場や身近な人と考えていきたいと思います。研修では人権を守る強い意志のある仲間と学べ、頼もしさを感じました。
『福島のいま…福島フィールドワーク』
●獲得目標
(1)東日本大震災と福島第1原発事故から13年目にあたり、被災地の置かれている現実と復興に向けた取り組みを知る。
(2)福島の現状をみて今後、原発ゼロに向けての取り組みにつなげることができる。
●行程表概要
1日目
▽学習会
「震災後の経過と今」
伊東 馨氏(浜通り医療生協かもめ班班長)
▽いわき震災伝承未来館見学
2日目
▽請戸小学校見学
▽原子力災害伝承館見学
▽宝鏡寺・伝言館見学
《東京民医連看護管理者研修について》
21世紀を展望して、民医連運動の積極的担い手となる看護幹部の育成と民医連の医療・看護を系統的に学び実践力、指導力を高める目的で、1997年「看護幹部養成講座」開校。2007年「看護管理者研修」と名称変更。民医連の看護管理者としての基本を学ぶ機会を系統立てた研修内容に整理し、毎年開催(2019・2020年はコロナ禍で中止)。
〇主催 東京民医連看護部
○目的
・次代を担う看護幹部の養成
・民医連綱領のめざす方向に確信を持ち、情勢を切りひらき、情勢に負けない力を身につける
・看護管理者の交流を深め、看護幹部集団づくりを行う
○対象
研修未受講で概ね新任の病院・診療所の看護師長及び訪問看護ステーション所長
○2024年8月30日~2025年1月17日の期間で全9講座
・参加にあたって自己目標を立てる
・講座ごとに獲得目標を設定事前レポート・必読文献・参考文献で事前学習
・講座後、グループワークで学びを深める
・グループごとの学びを発表し共有する
・事後レポートの提出