医師増員と診療報酬再改定で地域医療を守ろう
東京民医連医師部長(立川相互病院副院長) 山田 秀樹
医師増員と診療報酬再改定で地域医療を守ろう
東京民医連医師部長(立川相互病院副院長) 山田 秀樹
今、日本の医療・介護は、医師・医療介護従事者の不足とかつてない経営困難で危機的状況を迎えています。この2つの問題について、事業所あげて、地域に足を踏み出し連帯を広げ、国民的な世論に高めて、困難を突破することが求められています。
2024年改定で全国の医療機関が経営困難に
今年度の診療報酬改定について、今年9月の福祉医療機構がおこなった病院経営動向調査(図1)、さらに3病院団体が行った調査でも、経営状況が急速に悪化していることが明らかになり「病院経営の危機的状況に対する救済措置・財政支援の要望」を発表するに至っています。全日本民医連も「経営危機を克服し、地域医療を守り抜くために、今こそ『オール地域』で『たたかい』の前進を」と呼びかけて、アンケートと診療報酬再改定を求める団体署名に取り組んでいます。幹部を先頭に、つながりのある全ての病院を訪問・懇談し、署名を広げていきましょう。
国の医学部定員削減方針はせめぎあいの情勢に~署名を力に政策の転換を
国は2025年をめどに地域医療構想の実現に向け、コロナ禍で先送りしてきた医学部定員削減と医師偏在対策を待ったなしの課題として取り組もうとしています。あくまで医師不足を認めず、地域と診療科の偏在の解消のみに固執しています。
これに対し、今年8月、地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会は医学部の大幅定員増や新設を行い医師の絶対数を増やす要望を、また国の医師偏在指標で医師多数地域とされた13県も10月、定員削減に反対の要望書を提出するなど、医師増やせの声が広がりつつあります。
絶対的医師不足を大きな世論にするためには、医師自身が当事者として声を上げる必要があります。国は、今年度から医師の働き方改革をスタートさせた一方で、過労死水準の働き方を医師に強いて2029年に医師需給は均衡するとの誤った推計を一貫して流布しています。この推計に対しては厚労省の検討会でも疑念が噴出しています。日本の人口当たりの医学部定員はOECD36カ国中最低ですが、諸外国は高齢化に備え医学部定員を増やそうとしています。医療需要も今後40年以上減少しないと試算される中での医学部定員削減方針は、今後の日本の医療を崩壊に導くものです(図2)。
この間、本紙に2人の女性医師の連載コラムを掲載しました。誰もがライフステージに応じた多様な働き方やキャリア形成の保障など医師として生き生きと働くためには、医療界は旧態依然とした業務構造から脱却しなければなりません。患者の権利のみでなく、医療従事者の人権の保障やジェンダー平等がうたわれる今、真の働き方改革を実現するためには、医師不足の解消が必要です。現場の困難な状況や思いを各々の言葉で訴えて共感を広げていきましょう。
2009年、ドクターウェーブとして取り組まれた医師医学生署名は約2万2千筆を集める中で、医師養成数削減の閣議決定を撤回させ、医学部定員増(最大で定員1600人余り)を実現させるという歴史的転換を生み出しました。
今回は全国で6万筆の目標ですが、東京民医連の到達は6月中旬現在で、619筆、県連目標の17%を超えました。
医師・医学生向けのWEB署名(https://ishiigakusei.com/ 医師医学生署名をすすめる会HP)も活用しながら来年3月末の期限まで、さらなる高みを目指して運動を進めましょう。
国民向けのWEB署名も始まっています(QRコード参照)
国民向けの署名(人権としての医療を守るために、医師・医療従事者を増やそう!)については、change.orgから署名が可能です。現場で困難を実感する職員の皆さんや共同組織の方々も取り組める署名です。
この場ですぐ!署名して下さい。周りの方々にもお声かけいただいて広げていただければ幸いです。