東京民医連

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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

東京民医連第57回定期総会を開催

 東京民医連は、3月22日、23日の2日間の日程でセミナーハウスクロスウェーブ府中で、第57回定期総会を開催しました。今回の総会は6年ぶりの対面で行い、代議員による全体会や分散会での活発な論議を経て「第57回定期総会方針」「東京民医連第6次長期計画」の二つの議案を採択しました。また、第56期の決算と第57期の予算、66人の役員を選挙によって選出しました。
 冒頭、生田利夫副会長が訪問診療を行う医療機関の増加や診療報酬・介護報酬のダブル改定などの変化に対して「数字に一喜一憂するのではなく、各法人・事業所が地域の医療・介護の実態をつかみ、方針を立てることが求められ、それが明日への展望と確信につながる」と活発な論議を呼び掛け、総会が開始されました。
 議長団および総会役員の選出後、根岸京田会長が挨拶しました(左に掲載)。
 続いて、井上均副会長が第57期役員候補の提案を行いました。第57期方針の重点課題である(1)まちづくりを見据えた医療・介護・歯科・薬局の一体的取り組みを進めること。(2)医師をはじめ、職員の確保と養成を前進させること。(3)全職員の力で経営危機から脱すること。(4)平和と憲法を守り、ケアが大切にされる社会をめざすこと。これらを推進する理事会構成とし、また女性役員の登用と世代交代も考慮して、63人の理事会役員と3人の会計監査を、本総会に推薦することが提案されました。後に代議員の投票により全員信任され、女性比率は20・6%で、2年前の19・7%から前進しました。

 

各議案の提案
 西坂昌美事務局長が第1号議案「第57回総会方針案」を提案しました。まず第56期の感染対策による厳しい行動制限が求められる中でも、人権と公正、ジェンダー平等、医療介護の倫理を意識して、ともに育ち合う取り組みが進められた2年間と振り返りました。そして、ロシアのウクライナ侵略を口実にした日本国内での軍事拡大、憲法改悪の動きが強まる中でもそれを跳ね返してきたと強調しました。
 6次長計の最初の2年間となる第57期の課題として、まちづくりを見据えた医療・介護・歯科・薬局の一体的取り組みを共同組織とともにどのように創造するかが大きな課題であり、それに挑戦するためにも、現在の深刻な経営危機を乗り越えようと呼びかけました。
 続いて、岡村博副会長が第2号議案「東京民医連第6次長期計画案」を提案しました。まず第5次長計を策定した2016年からの7年間を振り返り、職員がそれぞれの持ち場で最大限の力を発揮して新型コロナパンデミックを乗り越え、患者・利用者の命と健康を守ったことに対して、5次長計で掲げたHPHとSDH、人権の視点で無差別平等の地域包括ケアをすすめる医療・介護活動の二つの柱を実践してきた結果であると評価しました。一方で医師の養成や経営の課題は6次長計に引き継ぐ課題であると指摘しました。
 6次長計で何をめざすのか。人口減少・超高齢化、医療介護を取りまく厳しい情勢のなかで地域の要求に応えて事業を継続するには、従来の枠を超えた新たな発想で地域に依拠した医療介護活動を展開しようと提起しました。性別、国籍に関わらず誰もが人権と尊厳を保障され、幸せな生活が営める。高齢で認知症があっても一人暮らしでも、住み慣れた場所で最期が迎えられる地域包括ケアのネットワークづくりなどを日々の医療介護の実践と結び付けて進めていくこと。生産年齢人口が急減する中で人材確保とあらゆる職種の後継者養成を前進させることなどが提起されました。
 第三号議案「2023年度決算・会計監査報告」第四号議案「2024年度予算・2025年度概算予算」が提案され、組織小委員会に議論を付託して休会しました。議事を再開して東京民医連の医療・介護活動と運動に貢献された10年・20年・30年勤続した職員888人の表彰を行いました。代表して30年勤続された健友会の渡邉由絵看護師が感謝状を受け取り、挨拶しました。

 

7人の代議員が発言
 続いて方針案と6次長計案の全体会討議が行われ、7人の代議員から発言がありました。
 健生会平野裕三代議員は、立川相互病院周辺の18病院と当該地域の保健所が新型コロナウイルス感染症対策について会議を行い、情報交換することで地域全体の感染対策が進み、連携が前進したことを報告。
 岡部敏彦理事は、OECD諸国で6番目に医師が少ない日本で医師数を抑制する政策がとられ、後期研修医の過労死まで生んでいる医師不足の実態を訴え、医師・医学生署名運動を成功させ抑制政策をやめさせ、医師を増やそうと発言。
 みさと健和病院加藤好江代議員は、看護労働実態調査から見えた民医連看護の課題について報告。看護師の確保・定着には、地域の声を聞きポジショニングを明確にする、働き方改革の見える化、民医連看護にこだわった育成などが課題だとしました。
 千石にじの家田中邦彦代議員は、介護人材確保が困難な中、17歳の高校生を非常勤採用し、新人育成プログラムに基づき、職員全員の柔軟な対応で本人の意欲を後押して、成長していることを紹介。
 立川相互ふれあいクリニックの石塚貴之代議員は、三多摩地域で実施した791人のPFAS血中濃度検査結果を報告。半数近くが米国の健康被害が発生するおそれがあるとしている基準を超過している実態を紹介。病体生理研究所で導入した分析機器を活用して、健康被害を明らかにし、住民の要求に応えていこうと呼びかけました。
 健和会の佐々木栄明代議員は、乳腺外科医師冤罪事件裁判の経過を報告。10万筆を越える無罪判決を求める署名が力となり、最高裁で差戻判決を勝ち取りました。科学的根拠に基づかない鑑定結果を覆し、無罪判決を勝ち取るために一層の支援を呼びかけました。
 増子基志理事は、「3年後には、民医連の3割の法人が破綻」という認識に立ち、嫌われる勇気を持って改善提案しなければいけないと経営幹部の姿勢を示しました。

 

分散会・全体会で活発な討議
 その後は10分散会に分かれ、240分の分散会討議が行われました。分散会では412の発言があり、57期方針と6次長計について活発な討議が行われ、第1日目が終了しました。
 第2日目は議事運営委員長から分散会での討議内容の報告を受けた後、分散会発言の内、座長団会議が推薦した5つの発言を全体会で報告しました。(後掲)

 

西坂事務局長が総括答弁
 ここまでの全体会、分散会での討議を受けて、理事会を代表して西坂事務局長が総括答弁を行いました。総会当日に判決のあったノーモアミナマタ熊本訴訟で熊本地裁が多くの民医連の医師も関わった「共通診断書」の意義を20年の除斥期間を援用して損害賠償を認めなかった判決を批判。今後、新潟、東京の裁判支援運動を強めようと訴えました。また、スローガンについて「憲法、平和を守り、ケアが大切にされる社会をめざそう」との提案に人権を加えたほうがよいとの意見を受け「人権、ケアが大切にされる社会をめざそう」とする変更を提案しました。その他、方針案・6次長計を補強する意見として、高齢化する被爆者の介護費申請や無料低額診療事業の問題点と国保法44条の適用を広げることなどの意見を紹介し、加筆修正することを表明。内容については今期の理事会へ委ねていくこととしました。
 改めて強調したいこととして深刻な経営危機をあげ、職員一人ひとりを信頼して、現状を伝え、職員の力を引き出すことができれば必ず打開できると訴えました。

 

すべての議案が採択される
 総括答弁をもって討論を終了し、第1号議案から第4号議案について採決し、いずれも満場一致で採択され、引き続き内田てる美前理事が特別決議「東京民医連結成70年の歴史に学び、平和、人権とケアが大切にされる社会をめざして行動しよう」を読み上げて提案し採択されました。
 続いて根岸会長が56期で退任される役員13人を紹介しました。13人を代表して田村直副会長が退任の挨拶をしました。(後掲)
 また、西坂事務局長が本総会で選出された66人の新役員を紹介し、代表して根岸会長が挨拶に立ち「いのちを守り、医療・介護現場を守り、経営を守り、平和を守っていく。このような活動が一層重要になる2年間を理事会が覚悟を持って歩んでいく」と決意を述べました。
 総会の最後に髙橋雅哉副会長が閉会挨拶しました。立川相互病院が開院以来唯一黒字となったのが当時の民主党に政権交代し、診療報酬を引き上げた2010年11年だったことをあげ、経営危機を乗り越えるためにも市民と野党が共闘して軍事、大企業や一部の金持ち優先の政治から国民の生活を守り、そのための医療機関を守る政権を打ち立てるために行動することを訴えて2日間にわたる総会を締めくくりました。