東京民医連

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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

核兵器の問題を自分ごととして考え行動しよう
―第2回締約国会議に参加して―
東京学生平和ゼミナール 田原ちひろさんに聞く

 核兵器禁止条約は2021年1月21日に批准国50か国に到達し、発効してから3年が経過しました。批准70か国、署名93か国に到達しています。昨年11月27日から12月1日までニューヨークで核兵器禁止条約第2回締約国会議が開催され、政府代表やNGOが集まり、核のない世界について議論されました。
 日本からも多くのNGOの代表が参加しています。大学生有志が集まり平和について学んでいる東京学生平和ゼミナールからは二人の学生が参加しました。今回は同ゼミナールの田原ちひろさんにインタビューしました。

 

――今回の締約国会議にどうして参加することになったのですか。
 田原 高校生の時から核兵器廃絶運動に関わっています。もともとはニューヨークでの原水爆禁止世界大会2020年に参加を予定していましたが、大会が中止となりました。私は東京学生平和ゼミナールの仲間と一緒に街頭や学校で核兵器廃絶と日本の核兵器禁止条約の参加を求める署名に取り組んできました。街頭では通りすぎる人も多くいたり、外務省にも禁止条約への署名・批准を求める要請に行きましたが、私たちが求める回答は得られず、歯がゆい思いもしてきました。
 今回、会議に参加してみて、名前も知らなかった小国やドイツなどアメリカの傘の下にある国の代表、またアメリカをはじめ世界各国から集まった市民団体の人びとと核兵器廃絶の道筋についての真剣な議論に参加できてとても励まされ、勇気をもらいました。政治家だけでなく、市民が参加することで成り立っている会議だと思いました。

 

――若い方が多く参加していたと聞きましたが、同世代としてたくさんの刺激を受けたのではないでしょうか。
 田原 そうですね。アメリカの大学などで活動されている方がたと交流する機会がありました。ジェンダーや環境問題、気候危機など多様な角度から核兵器廃絶について考えたり、ニューメキシコ州の先住民が放射性物質と知らずにウラン採掘させられている問題を取り上げたり、多彩に活動されていました。世界の若い世代が声をあげることで核兵器廃絶を求める声が広がっていくと思います。

 

――NPT再検討会議では、核保有国の一致ができず、なかなか成果が見えてきませんが、締約国会議は毎回宣言が採択され、成果がでていますね。
 田原 議論の過程では、一致できないこともありました。でも一致できることを重視して宣言という形にできています。それが大切なのだと学びました。

 

――締約国59か国、オブザーバー参加35か国、合計94か国が参加した中、唯一の戦争被爆国の日本は参加していませんね。
 田原 核保有しているアメリカの同盟国も参加していました。締約国会議は核兵器廃絶の道筋を論議することも目的にしていますが、様々な立場にある国の代表や市民が参加することで対立や分断を乗り越えていく意味でも大切だと思います。武力で解決するのではなく、対話を通じて平和を実現していく。そのような規範を作っていくうえでこの条約が大きな役割を果たすのではないかと思います。本来なら唯一の戦争被爆国で平和憲法を持つ日本への期待は大きいと思います。

 

――とても意義ある会議なのに、日本の大手メディアの扱いは小さいですね。
 田原 学校の教科書で広島・長崎の原爆のことは知っていますが、核兵器禁止条約が発効し毎年締約国会議を開催しているとか、日本が参加していないことなどについては知らない方も多くいらっしゃいます。
 もちろん街頭での宣伝も続けるのですが、私たちの世代の情報源は圧倒的にSNSです。SNSで広がるようにしたいですね。

 

――これからどんな活動をしていきたいですか。
 田原 会議で気候危機などエコシステムにとって核は受け入れられないと発言もありました。核の冬とか生存さえも危ぶまれます。気候危機の問題から核問題を考えていきたいです。
 また、ジェンダーとの関わりでは、「放射線は男性・少年よりも女性・少女の身体に過大な影響を与えると検証されていること」、「放射線の被害として、胎児が流産・死産したり、新生児が生まれながらに障害を持っていたり、将来世代の健康に影響を及ぼしていること」等が報告されていました。核兵器被害は性別で格差が生じることを学び、核問題に対してより当事者性を持つことができました。

 

――本日はありがとうございました。民医連には若い職員もたくさんおり、毎年、原水禁世界大会に代表を送っています。最後に民医連職員へのメッセージをお願いします。
 田原 普通に生活していると情報がはいってこない難しさもありますが、核兵器の問題について自分ごととしてとらえていただいて、ぜひいっしょに行動していきましょう。