東京民医連

ニュース

みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

原発事故発生から12年福島の現状と課題
原発問題住民運動全国連絡センター代表委員いわき市市民訴訟原告団長 伊東 達也

1、今でも多くの人々を苦しめ続けています

〈故郷に戻れない多数の人がいます〉

 避難指示区域では故郷に戻っていない人は、3・11当時から見れば8万人もいます。また、小中学生は事故前に比べると1割に減少しています。

 

〈精神的被害を広範囲な人々にもたらし続けていま

す〉

 環境社会学者は、強制避難指示区域の人々には「ふるさと剥奪」による被害、避難指示区域外で一時避難したが戻って住み続けている人々には「ふるさと損傷」による被害、戻らなかった人には「ふるさと疎外」による被害と名付けています。

 

〈福島全体の産業も3・11前に戻っていません〉

 農業産出額は事故前の90%、林業産出額は83%(山菜・キノコなどの特殊林産物の出荷制限などは今も16県に及んでいます)、沿岸漁業の水揚げ高は20%で、

 

〈30年~40年での廃炉終了はほぼ不可能となっています〉

 廃炉の最難関はデブリ(溶けて固まった燃料)の取り出しですが、いまだ取り出す見通しが立っていません。政府と東電は、廃炉とは「更地に戻す」こととしていますが、デブリ取り出しに成功しても、それを運び出すところはなく敷地に留め置かれる可能性が極めて高くなっています。
 低レベル放射性廃棄物は廃炉になる普通の原発に比べて35倍の量が発生するとみられており、これも敷地に置かれる可能性が極めて高く、更地にするには21世紀を超えるでしょう。

 

〈汚染水の海洋投棄が強行されようとしています〉

 この問題には、しっかりした対案があります。それはコンクリートによる広域遮水壁で地下水を完全に止めて汚染水増加の原因を取り除き、一方で汚染されていない地下水は集水井の建設で集めて汲み上げる方式です。その建設費は凍土壁の半分程度で出来るものです。
 政府・東電は自らの失敗を反省せず、海洋投棄を強行しようとしています。今以上、世界の海を汚すことは許されません。

 

〈「謝れ、 償え、 なくせ放射能汚染」を求めて集団訴訟が続いています〉

 昨年の6月最高裁判所は、福島第一原発事故の発生について「国に責任はない」というひどい不当判決を出しました。この判決を受け入れる原告団は皆無であり、大方の国民も国に忖度したものと受け取っても不思議ではないものでした。
 現在、後続する原告団・弁護団が不当判決を覆そうと、全国各地の裁判で必死に頑張っています。私も「いわき市民訴訟」の原告団長として努力を続けています。3月10日に判決が出ます。

 

2、岸田政権は福島事故を無視して原発依存政策回帰策を打ち出しました

 岸田政権は、原発再稼動促進、運転延長、新増設など原発依存回帰政策を進めることを打ち出しましが、これは福島の教訓を無視し、現状を顧みない逆戻りです。いまこそ、「福島事故を繰り返すな(ノーモア・フクシマ)」です。
 日本は自然再生エネルギーに恵まれた国であり、大事故を起さず、クリーンな再生可能エネルギー発電を思い切って増やし、同時に蓄電、省エネに取り組むことが必要です。
 原発は核兵器製造の技術を使ったもので表裏一体の関係にあります。私たちは原発事故で町民が強制避難させられた楢葉町の宝鏡寺に、ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマを結ぶ「非核の火」を灯しました。
 原発問題への国民、県民世論も3・11を通して大きく変わりました。それがすっかり戻ったわけではありません。
 ロシアがウクライナのザポリージャ原発を砲撃、占拠し、原発の存在自体が戦争で狙われることを世界に示しました。これを受けて原発を推進する福井県知事が「迎撃態勢に万全を期すとともに自衛隊の配備」を岸田政権に求めました。とんでもないことです。
 日本では原発をなくす、核兵器を廃絶する、9条を守る運動は密接に結びついた関係となっています。2023年を原発依存回帰政策を進められない、大軍拡・大増税を許さない年にするため、運動を広げましょう。