東京民医連

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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

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 「東ニ病気ノコドモアレバ 行ッテ看病シテヤリ」▼宮沢賢治の「雨ニモマケズ」には「行ッテ」という言葉が3回出てくる。三上満さんによると、この「行ッテ」は、重い病の床に伏しているため、恐慌と大凶作に苦しむ岩手県の人たちのところに行くことができない賢治の心情を反映した、「行ッテの思想」だという▼「行ッテ」といえば、先日の福島第一原発事故の被害者による「生業を返せ、地域を返せ!」訴訟で、福島地裁によって国の法的責任と東京電力の過失を認める判決が下されるにあたって、裁判長以下3人の裁判官が帰宅困難地域の原告宅や畜舎などに「行ッテ」検証を行ったことも重要だった▼この裁判所による現場検証は、被害者である原告側が「長期・大規模な被害の実相を把握するためには現地を実際に見ることが必要」と求め続け、実現したもの▼裁判官が放射能防御服を着て行った歴史上はじめての検証となった。「行ッテ」こそ感じる、実践できることがあることは確かなこと▼それと別に、「雨ニモマケズ」の「行ッテ」には、「とにかく行ってみる」こと自体に意義があるとも感じられる。「雨ニモマケズ」の書かれた手帳の余白には、朱筆で「行ッテ」の書き込みがあるとのことだが、はたして賢治は病の床で何を思ったのだろうか。(目)